第100回薬剤師国家試験

◆問226-227

68歳女性。胃全摘出術の既往がある。半年前に意識障害を起こし入院中。21週前から経腸栄養療法を開始し、3日前の検査の結果、白血球数減少と貧血を認めた。出血の傾向はなく、骨髄穿刺の結果からは骨髄抑制は認められなかった。
検査値
白血球数:3.0×103/μL、赤血球数:2.86×106/μL、ヘモグロビン:8.4 g/dL、ヘマトクリット:25.1%、血小板数:18.7×104/μL、総タンパク質:7.8 g/dL、アルブミン:4.2 g/dL、トランスフェリン:275 mg/dL

◆ 問226

この患者の栄養管理に対する薬剤師の対応として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
  • タンパク質・エネルギー低栄養状態に関連した貧血の可能性について医師に伝えた。
  • n-3系脂肪酸を多く含む経腸栄養剤への変更を医師に提案した。
  • 血中の銅濃度を測定するよう医師に提案した。
  • 鉄剤の追加処方を医師に提案した。
  • 過去6ヶ月間の体重変動を確認した。

◆ 問227


◆ 問226

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3


総タンパク質(基準値:約6.5〜8.0 g/dL)、アルブミン(基準値:約4.0〜5.0 g/dL)ともに基準値範囲内であり、低栄養状態による貧血の可能性は低いと考えられる。


本患者は、長期間(21週間)経腸栄養療法を行っていることから、必須微量元素(Cu、Znなど)が欠乏しやすい状態にある。このことから、本患者な銅欠乏による貧血に罹患していると考えられる。銅欠乏による貧血に対して、n−3系脂肪酸を多く含む経腸栄養剤を投与しても症状の改善を期待することはできない。


トランスフェリン(基準値:200〜340 mg/dL)は基準値内であり、鉄欠乏による貧血の可能性は低いと考えられる。


本患者は低栄養状態でない(解説1参照)ことから、過去6ヶ月間の体重変動を確認する必要はない。

◆ 問227

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、4


摂取した食事中の窒素量と排泄された窒素量が等しい状態のことを、窒素平衡にあるという。タンパク質・エネルギー低栄養状態が長期に続くと、摂取した食事中の窒素に比べ、排泄される窒素量が多くなるため、体内の窒素平衡は負となる。


n-3系脂肪酸(エイコサペンタエン酸(C20:5)やドコサヘキサエン酸(C22:6)など)は、長鎖脂肪酸であり、胆汁酸とミセルを形成し、小腸から吸収される。なお、中鎖及び短鎖脂肪酸(炭素数10以下)は、胆汁酸とミセル形成せずに、そのまま小腸から吸収される。


亜鉛と銅は同一の担体(二価金属輸送体1:DMT1 divalent metal transporter1)を利用して輸送されるため、過剰の亜鉛を摂取すると、銅を輸送する担体が競合的に阻害される。


非ヘム鉄はFe2となり、小腸から吸収される。非ヘム鉄に含まれるFe3は、ビタミンCによりFe2に還元されるため、非ヘム鉄の小腸からの吸収は、ビタミンCにより促進される。


Body mass index(BMI)が22の場合、「標準」と判定される。
<BMIの判定基準>
BMI:18.5以下 やせ
BMI:18.5〜25 標準体重
BMI:25以上 肥満