第102回薬剤師国家試験

◆問264-267

58歳男性。手術不能の直腸がんと診断され、以下に示すレジメンに従った化学療法を施行することとなった。
102回問264-267画像1

◆ 問264


◆ 問265


◆ 問266


◆ 問267

前問の遺伝子診断の結果、酵素活性の低下を伴う遺伝子型であることが判明した。この患者の治療上、注意すべき内容として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
  • ベバシズマブの薬効減弱
  • ベバシズマブの副作用発現
  • イリノテカンの薬効減弱
  • イリノテカンの副作用発現
  • フルオロウラシルの薬効減弱
  • フルオロウラシルの副作用発現

◆ 問264

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


本設問の化学療法は、FOLFIRI(フルオロウラシル+レボホリナートカルシウム+イリノテカン塩酸塩水和物の併用療法)+BV(ベバシズマブ)療法である。

本化学療法に用いられる薬物について以下に示す。

・フルオロウラシル

生体内で活性代謝物であるフルオロデオキシウリジン一リン酸(FdUMP)に変換され、チミジル酸合成酵素を不可逆的に阻害し、DNA合成を阻害する。

・レボホリナート

本剤の代謝産物が、FdUMP、チミジル酸合成酵素と強固な三元複合体を形成し、チミジル酸合成酵素の解離を抑制することにより、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強させる。

・イリノテカン塩酸塩水和物

生体内でカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物SN-38に変換され、トポイソメラーゼⅠを阻害することによりDNA合成を阻害する。

・ベバシズマブ

血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対するヒト化モノクローナル抗体であり、VEGFと特異的に結合し、VEGFとVEGF受容体との結合を阻害することにより、血管新生を抑制し抗腫瘍作用を示す。

◆ 問265

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、3


選択肢のうち、本化学療法を施行するに当たり、説明すべき処方薬の副作用は「高血圧」「下痢」である。

ベバシズマブは、重大な副作用として高血圧性脳症、高血圧性クリーゼを起こすことがあるため、投与期間中は血圧を定期的に測定し、適切な処置を行う必要がある。

イリノテカン塩酸塩水和物は、重大な副作用として高度の下痢を起こすことがあるため、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察する必要がある。また、フルオロウラシルは重大な副作用として激しい下痢を起こすことがある。

◆ 問266

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:5


ビリルビンは、赤血球中のヘモグロビンが代謝されることによって生成される黄色の色素であり、直接型ビリルビンと間接型ビリルビンが存在する。本患者の検査値では、直接ビリルビンは正常範囲内であるが、間接ビリルビンが高値を示しているため、グルクロン酸抱合能に異常がある可能性がある。そのため、グルクロン酸抱合に関与する酵素であるグルクロン酸転移酵素(UGT)の遺伝子多型を調べることが推奨される。

参考
・直接型ビリルビン(抱合型ビリルビン):肝臓でグルクロン酸抱合を受けた後のビリルビン
*直接型ビリルビンが上昇している場合
肝臓から胆汁中への直接型ビリルビンの排泄が低下している可能性がある。
・間接型ビリルビン(非抱合型ビリルビン):肝臓でグルクロン酸抱合を受ける前のビリルビン
*間接型ビリルビンが上昇している場合
肝臓でのグルクロン酸抱合に異常がある可能性がある。
溶血性貧血等により赤血球中のヘモグロビンが過剰に分解されている可能性がある。

◆ 問267

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:4


イリノテカンは、カルボキシルエステラーゼにより活性代謝物であるSN−38となり、その後、UGT1A1によりSN−38—グルクロン酸抱合体となり胆汁中排泄される。よって、UGT1A1の活性が低下している患者では、SN−38のグルクロン酸抱合を十分に行うことができないため、イリノテカンの副作用(骨髄抑制等)が現れる可能性がある。