第103回薬剤師国家試験

◆ 問173

ある薬物100 mgを被験者に急速静脈内投与した後に血中濃度及び尿中排泄量を測定したところ、未変化体の血中濃度時間曲線下面積(AUC)は1.0mg・h/L、代謝物の尿中総排泄量は20 mg(未変化体換算量)であった。一方、この薬物200 mgを同一患者に経口投与したときのAUCは0.8mg・h/Lであった。この薬物の体内動態の説明として誤っているのはどれか。1つ選べ。
ただし、この薬物は肝代謝及び腎排泄でのみ消失し、代謝物は全て尿中に排泄されるものとする。また、体内動態は線形性を示し、肝血流速度は80 L/hとする。
  • 生物学的利用率は40%である。
  • 全身クリアランスは100 L/h である。
  • 静脈内投与後の未変化体の尿中排泄率は80%である。
  • 肝抽出率は25%である。
  • 経口投与された薬物のうち、門脈に移行する割合は75%である。

◆ 問173

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:5


1 正しい
生物学的利用率は血中濃度時間曲線下面積および投与量から以下の式より求めることができる。
103回問173画像1

2 正しい
全身クリアランスCLtotは静脈内投与時の投与量と血中濃度時間曲線下面積から以下の式より求めることができる。
103回問173画像2

3 正しい
問題文に「代謝物の尿中総排泄量は20 mg(未変化体換算量)であった」「この薬物は肝代謝及び腎排泄でのみ消失し、代謝物は全て尿中に排泄されるものとする」と記載されていることから、投与した100 mgのうち、20 mgは代謝により消失し、80 mgは腎臓より未変化体として消失していると考えられる。このことから、静脈内投与後の未変化体の尿中排泄率は80%である。

4 正しい
肝抽出率Ehは肝クリアランスCLと肝血流量Qから以下の式より求めることができる。
103回問173画像3

5 誤っている
門脈に移行する割合は、以下の式で表される。 
103回問173画像4

バイオアベイラビリティFが以下の式で表されることから、門脈に移行する割合を以下のように求めることができる。
103回問173画像5

門脈に移行する割合=Fa×Fg=F÷Fh=F ÷(1-Eh)=0.4÷(1-0.25)≒0.53