第103回薬剤師国家試験

◆問230-231

65歳男性。長期にわたるアルコール依存症と診断され、入院治療中。食事が摂れず栄養不良の状態であったが、さらに担当看護師より、眼球運動の異常やふらつき、意識障害が確認されるようになったと報告があった。原因としてビタミン欠乏の可能性が考えられた。

◆ 問230

この患者で欠乏し、症状の原因となっている可能性が最も高いビタミンはどれか。1つ選べ。
  • ビタミンB1
  • ビタミンB2
  • ビタミンB6
  • ビタミンB12
  • ビタミンE

◆ 問231


◆ 問230

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1


本患者はアルコール依存症であり、また、栄養不良状態であることに加え、症状として眼球運動の異常やふらつき、意識障害が現れていることから、ビタミンB1不足によるウェルニッケ脳症が現れていると考えられる。

ウェルニッケ脳症は、ビタミンB1の不足によりみられる脳症であり、以下にその主な原因と症状を示す。

<ウェルニッケ脳症の主な原因>

・アルコールの過剰摂取(アルコールの分解にビタミンB1が利用される)

・下痢によるビタミンB1の吸収不良

・胃の全摘手術による栄養欠乏

・食事の偏りによる栄養不足 など

<ウェルニッケ脳症の主な症状>

・意識障害

・眼球運動障害

・運動失調 など

<参考:選択肢2〜5のビタミン欠乏症>
ビタミンB2
皮膚炎、舌炎、口内炎、口角炎など
ビタミンB6
舌炎、口内炎、口角炎、ペラグラ様皮膚炎など
ビタミンB12
巨血芽球性貧血など
ビタミンE
新生児:溶血性貧血
成人:脂肪組織に蓄えられているため欠乏症を起こしにくい

◆ 問231

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


ビタミンB1の特徴を以下に示す。

・豚肉、玄米、ダイズなどに多く含まれている。

・生体内でリン酸化され、チアミンピロリン酸となり、ピルビン酸脱水素酵素などの補酵素として働き、糖代謝を行う。

・水溶性ビタミンであり、多量に摂取しても尿中に排泄されるため、重篤な過剰症は特に知られていない。

・欠乏症により脚気、ウェルニッケ脳症を起こすことがある。