第104回薬剤師国家試験

◆問204-205

25 歳男性。造血幹細胞移植6ヶ月目で移植片対宿主病(GVHD)を発症し、閉塞性細気管支炎と診断されたため、入院し酸素療法を開始した。体温38.2℃、動脈血酸素飽和度は85%、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)38 Torr、動脈血pH7.4である。なお、患者は免疫抑制剤としてタクロリムスを服用している。

◆ 問204

この患者の病態及び治療として正しいのはどれか。2つ選べ。
  • GVHDは、移植した組織を宿主のT細胞が攻撃することで発症する。
  • GVHD の急性期の治療には、メチルプレドニゾロンの短期間大量投与が必要である。
  • 造血幹細胞の再移植が必要である。
  • タクロリムスを減量する必要がある。
  • 気管支拡張薬としてβ2刺激薬を用いる。

◆ 問205


◆ 問204

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


1 誤
GVHDは、移植した組織に含まれるT細胞が宿主細胞を攻撃することで発症する。

2 正
GVHDの急性期の治療には、メチルプレドニゾロンの大量投与が有効であるとされている。

3 誤
GVHDが認められた場合、造血幹細胞を再移植することはない。なお、白血病が再発した場合には、造血幹細胞を再移植することがある。

4 誤
造血幹細胞移植後タクロリムスを投与する場合、GVHDが認められないときは徐々に減量を行うが、本症例では、GVHDを発症しているためタクロリムスの減量を行わない。

5 正
GVHDにより閉塞性細気管支炎が認められた場合には、気管支拡張薬(アドレナリンβ2受容体刺激など)を用いる。

◆ 問205

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


1 正
常温、常圧において、混合気体の各成分の分圧は、気体分子のモル比に比例する。

2 誤
Torr(トル)は、圧力の単位であり、1Torrは、水銀を入れた容器にガラス管を入れたときに水銀柱1mm(ミリメートル)上昇させる圧力を表している。標準大気圧において、水銀を入れた容器にガラス管を入れると、水銀柱の高さが760 mm(ミリメートル)になることから、標準大気圧は 760 Torr となる。

3 誤
この患者の動脈血酸素飽和度(ヘモグロビン酸素飽和度)が85%、動脈血pHが7.4であることから、設問のグラフよりPaO2は約60 Torr程度であると推定される。
104回問204-205画像1

4 正
PaCO2が増加すると動脈血のpHが低下する。このことから、設問のグラフより、同じPaO2の場合、PaCO2が増加すると(動脈血のpHが低下すると)ヘモグロビンの酸素飽和度は低下すると読み取ることができる。
104回問204-205画像2

5 誤
酸素療法を開始することにより、ヘモグロビン酸素飽和度が上昇するため、 PaO2とヘモグロビン酸素飽和度の関係は、図の点線に近づくことはない。