第104回薬剤師国家試験

◆問226-227

58歳男性。 健康診断の結果が、体重72 kg、血清クレアチニン値1.0 mg/dL、BUN 20 mg/dL、 空腹時血糖値122 mg/dL、HbA1c(NGSP値)6.5%、BMI 25.6であったため、かかりつけ医を受診した。かかりつけ医での検査の結果、耐糖能異常と診断され、食事療法と運動療法を開始した。仕事上、夜勤があり、食生活が不規則で十分な改善効果が得られなかったため、以下の薬剤を処方され薬局を訪れた。患者は、この薬剤の服用は初めてで、服用方法や副作用について不安を抱いている様子であった。
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◆ 問226


◆ 問227

 前問の服薬指導の根拠となる糖質の消化・吸収に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • マルトースは、グルコースよりも小腸からの吸収効率が高い。
  • マルターゼは、α−グルコシダーゼである。
  • スクロースは、グルコースとフルクトースが α1→ 4結合したものである。
  • 二糖類が消化されずに小腸管腔内に滞留すると、浸透圧性の下痢を起こしやすくなる。
  • ボグリボースは、ラクトースの分解を阻害する。

◆ 問226

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、3


1 正
本剤を服用することにより、消化管においてα−グルコシダーゼが阻害され、二糖から単糖への分解が抑制される。消化管で未消化の糖類は、腸内細菌により発酵し、ガスを発生することから腸閉塞様症状(腹部膨満や放屁の増加など)の原因となる。また、消化管で未消化の糖類は、消化管の浸透圧を増加させるため、浸透圧性の下痢を誘発することがある。これらの症状が軽度の場合、身体に影響がほとんどないことから、本剤を継続して服用しても問題ない。

2 誤
本剤はほとんど消化管から吸収されないため、腎機能に対して影響を与えることはない。

3 正
本剤投与中に低血糖が現れた場合には、砂糖(スクロース:二糖)ではなく、グルコース(単糖)を摂取する必要がある。

4 誤
本剤を食直前に飲み忘れた場合には、以下のように対処する必要がある。
食事中に気づいた時にはすぐに服用し、食後に気づいた時には、その回を服用せず、次回服用時に1回分服用する。

5 誤
本剤は口腔内崩壊錠であり、消化管から吸収されるように設計されているため、唾液または水で飲み込む必要がある。

◆ 問227

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


1 誤
マルトースは、グルコースがα−グルコシド結合(α1→4結合)した二糖であり、単糖であるグルコースより小腸からの吸収効率が低い。
グルコースは、小腸に存在するNa/グルコーストランスポーター1(SGLT1)により小腸上皮細胞に取り込まれるが、マルトースはマルターゼによりグルコース2分子に分解されてからSGLT1により小腸上皮細胞に取り込まれるため、マルトースはグルコースに比べ小腸からの吸収効率が低い。

2 正

3 誤
スクロースは、グルコースとフルクトースがα1→β2結合したものである。

4 正

5 誤
ラクトースは、ガラクトースとグルコースがβ−ガラクトシド結合(β1→4結合)した二糖であることから、α−グルコシダーゼ阻害薬(ボグリボースなど)により分解を阻害されることはない。