第106回薬剤師国家試験

◆問258-259

85歳男性、独居。慢性閉塞性肺疾患(COPD)のため処方1による治療を受けていた。また、処方1のアドヒアランスは維持されていた。しかし、最近、他職種の報告や薬剤師自身の訪問時の確認から、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)が 90%を下回る機会が増え、湿性咳嗽などの症状が悪化していた。
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患者は、サポートがあれば吸入剤の使用が可能である。また、貼付剤の長期使用によると思われるかぶれが目立つ。

◆ 問258


◆ 問259

処方1及び前問で提案された薬物のいずれかの作用機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • シクロオキシゲナーゼを阻害することでトロンボキサンA2の生合成を低下させ、気管支平滑筋を弛緩させる。
  • グアニル酸シクラーゼを活性化させることでサイクリック GMP(cGMP)を増大させ、気管支平滑筋を弛緩させる。
  • アセチルコリンM3受容体を遮断することで、気管支平滑筋の収縮を抑制する。
  • アドレナリンβ2受容体を刺激することで、気管支平滑筋を弛緩させる。
  • 炎症性サイトカイン産生の抑制や抗炎症性タンパク質の誘導により、気道の炎症を抑制する。

◆ 問258

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、4


本患者は慢性閉塞性肺疾患(COPD)のため処方1による治療を受けていた。処方1のアドヒアランスは維持されていたが、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)が90%を下回る機会が増え、湿性咳嗽などの症状が悪化していることから、選択的β2受容体刺激薬のツロブテロールテープ単剤では効果が不十分であることが考えられる。また、貼付剤によるかぶれが目立つため、ツロブテロールテープから貼付剤以外の長時間作用性気管支拡張薬の併用を提案することが望ましい。

1 誤
アテノロールは、選択的β1受容体遮断薬であるが、一部気管支平滑筋のβ2受容体を遮断し、気管支を収縮させるおそれがあるためCOPDの治療には用いられない。

2 誤
ロキソプロフェンナトリウムは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であり、解熱、鎮痛のために用いられるが、COPDの治療には用いられない。

3 正
ウメクリジニウム臭化物は、長時間作用性抗コリン薬であり、気管支平滑筋のアセチルコリンM3受容体を遮断することで、気管支を拡張させるため、COPDの治療に吸入で用いられる。

4 正
インダカテロールマレイン酸塩は、長時間作用性β2受容体刺激薬であり、気管支平滑筋のβ2受容体を刺激することで、気管支を拡張させるため、COPDの治療に吸入で用いられる。

5 誤
硝酸イソソルビドは、一酸化窒素(NO)供与体であり、狭心症や心筋梗塞などの治療に用いられるが、COPDの治療には用いられない。

◆ 問259

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、4


1 誤
トロンボキサン合成酵素を阻害し、トロンボキサンA2の生合成を低下させることで気道収縮を抑制する薬物として、オザグレルがある。

2 誤
グアニル酸シクラーゼを活性化させることでサイクリックGMP(cGMP)を増大させる薬物として、硝酸イソソルビドがあるが、気管支平滑筋弛緩作用はない。硝酸イソソルビドは、NOを遊離してグアニル酸シクラーゼを活性化し、サイクリックGMP(cGMP)を増大させることで、血管平滑筋弛緩作用を示す。

3 正
アセチルコリンM3受容体を遮断することで、気管支平滑筋の収縮を抑制する薬物として、ウメクリジニウム臭化物がある。

4 正
アドレナリンβ2受容体を刺激することで、気管支平滑筋を弛緩させる薬物として、インダカテロールマレイン酸塩がある。

5 誤
炎症性サイトカイン産生の抑制や抗炎症性タンパク質の誘導により、気道の炎症を抑制する薬物として、フルチカゾンプロピオン酸エステルなどの副腎皮質ステロイド性薬がある。