第107回薬剤師国家試験

◆問200-201

68歳女性。痰を伴う咳、発熱、悪寒、息苦しさ、倦怠感を訴え、かかりつけ医を受診した。
(身体所見)
体温38.5°C、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)94%、心音異常なし、呼吸音左肺前胸部に水泡音、胸部X線肺浸潤影あり
(検査所見)
白血球数16,000/μL、CRP4.8mg/dL
副作用歴ペニシリン系抗生物質により発疹
以上の情報から、市中肺炎と診断された。

◆ 問200


◆ 問201

前問の抗菌剤投与により、症状が改善し、SpO2が94%から97%になった。このSpO2の測定には、パルスオキシメータが用いられている。パルスオキシメータによるSpO2の測定及びその値に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
  • パルスオキシメータによるSpO2の測定には赤色光と赤外光が用いられる。
  • 酸素と結合したヘモグロビン(HbO2)と、酸素と結合していないヘモグロビン(Hb)の濃度は、どちらも測定時に用いられる2つの波長における吸光度より求められる。
  • SpO2(%)は、[HbO2]÷([Hb]+[HbO2])×100で定義される。
  • 原理的に親指、人差し指、小指で測定したSpO2値に違いはない。
  • この患者の動脈血酸素分圧(PaO2)は、抗菌剤投与によって1.03倍(=97/94)になった。

◆ 問200

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


市中肺炎の主な原因菌として、肺炎球菌、インフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマがあげられる。市中肺炎を治療するにあたり、若年、基礎疾患なし、胸部聴診異常なし、痰がない、白血球数が1万/μL未満のうち、4項目以上当てはまる場合には、マイコプラズマ肺炎を中心とした非定型肺炎の治療を行うが、本患者は上記に該当しないため、定型肺炎の治療を行うことが推奨される。定型肺炎では、β-ラクタム系抗菌薬、レスピラトリーキノロン系薬、マクロライド系抗菌薬が用いられる。本患者は過去にペニシリン系抗生物質により発疹が現れたことがあるため、β-ラクタム系抗菌薬(クラブラン酸カリウム・アモキシシリン水和物配合錠)を使用することはできない。よって、この患者には、レボフロキサシン水和物錠、アジスロマイシン水和物錠を使用することが推奨される。

◆ 問201

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:5


1 正しい
 パルスオキシメーターは、生体に外部から赤色光と赤外光の2つの波長の電磁波を照射することによりSpO2を測定する装置である。

2 正しい
 パルスオキシメーターでは、赤色光と赤外光の2つの波長の電磁波の吸光度を測定することにより、酸素に結合しているヘモグロビンの相対濃度[HbO2]と酸素に結合していないヘモグロビンの相対濃度[Hb]を求め、それらの値を[HbO2]÷([Hb]+[HbO2])×100に代入することでSpO2(%)が算出される。

3 正しい

4 正しい
 親指、人差し指、小指に流れる血液中の[HbO2]、[Hb]は同じであるため、原理的に親指、人差し指、小指で測定したSpO2値に違いはないが、それぞれの指で血流等が異なるため、SpO2値に違いが現れることがある。

5 誤っている
 動脈血酸素分圧(PaO2)は、動脈血中の酸素が占める量を圧力(Torr)で表したものであり、動脈血酸素飽和度(SpO2:動脈血中のヘモグロビンの何%が酸素と結合しているかを表す値)とは異なるものである。SpO2とPaO2の換算表を以下に示す。

107回問200-201画像1

PaO2が94%→97%となっていることから、動脈血酸素分圧(PaO2)は、抗菌剤投与によって約1.3倍(=91/71)になった。