第107回薬剤師国家試験

◆問252-253

62歳男性。3年前、階段を昇る時に息切れを感じるようになり受診したところ、左室肥大と肺うっ血を認め、慢性心不全と診断された。処方1〜処方3で治療されていたが、慢性心不全の増悪により入院した。その後、処方4を追加して病態が安定したため、退院することになった。現在の検査値等は以下のとおりである。

(検査値)
血圧 120/82 mmHg、心拍数 84拍/分、AST 24 IU/L、ALT 16 IU/L、
BUN 18 mg/dL、血清クレアチニン値 0.9mg/dL、Na 145 mEq/L、
K 2.9 mEq/L、CI 102 mEq/L、血清 BNP 410 pg/mL、左室駆出率 EF 3%

107回問252-253画像1

◆ 問252

 この患者に対する副作用モニタリングとして、適切なのはどれか。2つ選べ。
  • 腎機能検査値は基準値内と判断する。
  • 血清電解質(Na、K、CI)値は、いずれも基準値内と判断する。
  • 徐脈と判断する。
  • 今後、処方3の薬剤による血清ナトリウム値の上昇に注意する。
  • 今後、処方1や処方4の薬剤により血清カリウム値が上昇しすぎないか注意する。

◆ 問253


◆ 問252

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、5


1 正
腎機能検査値であるBUN(基準値:8〜20 mg/dL)および血清クレアチニン値(基準値:0.6〜1.0 mg/dL)は基準値範囲内である。

2 誤
Na(基準値:135〜148 mEq/L)、CI(基準値:98〜108 mEq/L)は基準値範囲内であるが、K(基準値:3.5〜4.9 mEq/L)は低値である。

3 誤
心拍数50未満を徐脈とするため、本患者(心拍数:84)は徐脈ではない。

4 誤
処方3(フロセミド)は、ヘンレ係蹄上行脚の管腔側からNa–K–2Cl共輸送系を抑制するため、低ナトリウム血症を誘発することがある。

5 正
処方1(エナラプリル)、処方4(エプレレノン)は、アルドステロンの作用を抑制するため、血清カリウム値を上昇させる可能性がある。

◆ 問253

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:5


1 誤
処方2のビソプロロールに関する記述である。ビソプロロールは、選択的アドレナリンβ1受容体遮断薬であり、心臓のアドレナリンβ1受容体を遮断することでノルアドレナリンによる心機能亢進を抑制するため、慢性心不全などに用いられる。BNPは、主に心室で合成され分泌されるホルモンであり、慢性心不全ではBNPの血中濃度が上昇するが、ビソプロロールにより病態が改善するため、BNPは低下する。

2 誤
処方1のエナラプリルに関する記述である。エナラプリルは、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であり、アンギオテンシン(Ang)ⅠからAngⅡへの変換を阻害することで、心筋の線維化を抑制する。

3 誤
心筋に直接作用して心収縮力を高めて、左室駆出率を改善する薬物は、デノパミンなどがある。デノパミンは、心筋のアドレナリンβ1受容体刺激によりcAMPを増加させることで、心筋収縮力を高めて、左室駆出率を改善する。

4 誤
処方3のフロセミドに関する記述である。フロセミドは、ヘンレ係蹄上行脚のNa−K−2Cl共輸送系を阻害し利尿作用を示すため、むくみを改善する。

5 正
処方4のエプレレノンに関する記述である。エプレレノンは、遠位尿細管及び集合管においてアルドステロン受容体を遮断して、尿中へのKの排泄を抑制する。