第108回薬剤師国家試験
◆ 問118
細菌の抗菌薬耐性化には種々の遺伝子もしくはその産物が関わっている。次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。-
グラム陰性菌の外膜にあるポーリンの増加は、カルバペネム系抗菌薬への耐性化を促す。
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腸球菌のバンコマイシン耐性遺伝子VanAの産物は、細胞壁のペプチドグリカン合成の代替経路で働き、グリコペプチド系抗菌薬の作用を回避する。
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リファンピシン耐性菌では、DNAポリメラーゼ遺伝子の変異により、耐性が獲得されている。
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カナマイシン耐性遺伝子産物の中には、抗菌薬をリン酸化する酵素として働き、RNAポリメラーゼへの結合を消失させるものがある。
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Rプラスミドなどの伝達性因子を介して薬物排出タンパク質が過剰発現することは、多剤耐性化の一因となる。
◆ 問118
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:2、5
誤:[グラム陰性菌の外膜にあるポーリンの増加は、カルバペネム系抗菌薬への耐性化を促す。]
カルバペネム系抗菌薬に対する耐性化は、グラム陰性菌において問題となっている。カルバペネム系抗菌薬の耐性菌は、主にβ-ラクタマーゼを産生することで、カルバペネム系抗菌薬を分解する能力を獲得するとともに、外膜のポーリンの発現量を低下させることで抗菌薬の透過性を低下させる。
正:[腸球菌のバンコマイシン耐性遺伝子VanAの産物は、細胞壁のペプチドグリカン合成の代替経路で働き、グリコペプチド系抗菌薬の作用を回避する。]
バンコマイシンは、ペプチドグリカン前駆体末端のD-アラニル-D-アラニンに結合して細胞壁合成を阻害する。腸球菌のバンコマイシン耐性遺伝子VanAの産物は、ペプチドグリカン合成酵素を変化させ、D-アラニル-D-アラニンの代わりにD-アラニル-D-乳酸を合成することでバンコマイシンへの親和性を低下させ、耐性化に関与する。
誤:[リファンピシン耐性菌では、DNAポリメラーゼ遺伝子の変異により、耐性が獲得されている。]
リファンピシン耐性菌は、RNAポリメラーゼの構造的な変化によりリファンピシンの結合部位を変化させ、リファンピシンに対して耐性を示す。
誤:[カナマイシン耐性遺伝子産物の中には、抗菌薬をリン酸化する酵素として働き、RNAポリメラーゼへの結合を消失させるものがある。]
カナマイシン耐性遺伝子産物の中には、カナマイシンをリン酸化する酵素として働き、カナマイシンをリン酸化することによりリボソームとの親和性を低下させ、耐性を示す。
正:[Rプラスミドなどの伝達性因子を介して薬物排出タンパク質が過剰発現することは、多剤耐性化の一因となる。]
Rプラスミドは、細菌における伝達性因子であり、細菌の間での水平伝播を介して細菌の耐性化を広範囲に広げることが可能である。Rプラスミドによる耐性化機構には、抗生物質破壊酵素の産生、抗生物質の排出促進、抗生物質の標的の変異、抗生物質の入口の変化などがある。