第108回薬剤師国家試験

◆問198-199

87歳男性。畑仕事中に意識がもうろうとなり、A病院に救急搬送された。現病歴と服用している薬剤の有無は不明であった。検査の結果、血清ナトリウム値が108mEq/Lと低ナトリウム血症を認めた。治療のため、3%塩化ナトリウム水溶液での点滴加療を開始することにした。処方内容や投与方法など治療方針について医師からICU担当薬剤師に確認の依頼があった。
108回問198-199画像1
A病院の医療安全マニュアルには、生理食塩液に対する浸透圧比4を超える注射液を投与する場合は中心静脈より投与することと記載されている。

◆ 問198


◆ 問199

塩化ナトリウム水溶液におけるイオン強度や活量に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • イオン強度は、Na+や Cl- の電荷数に依存しない。
  • イオン強度が高くなると、水中の Na+とCl-の間の相互作用は強くなる。
  • 搬送時の血清ナトリウム値と等しい Na+濃度の塩化ナトリウム水溶液のイオン強度は54mmol/Lである。
  • 塩化ナトリウム水溶液の活量aはa=γ・xで表される。ただし、γは活量係数、xはモル分率である。
  • Na+、Cl-の活量をそれぞれ a+、a-とすると、塩化ナトリウム水溶液の平均活量a±108回問198-199画像1で表される。

◆ 問198

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2


正:[処方どおりに調製すれば、3%塩化ナトリウム水溶液となるため、問題なしと判断した。]
誤:[算出された浸透圧比が4を超えていたので、中心静脈からの投与を依頼した。]

上記の2択はどちらかが正しければ、どちらかが誤りである内容です。すなわち、3%になるなら、生理食塩水が0.9%(これは基礎知識)なので、浸透圧比が4を超えません。

正:[処方どおりに調製すれば、3%塩化ナトリウム水溶液となるため、問題なしと判断した。]
生理食塩水、つまり0.9%食塩水500mLに、10%塩化ナトリウム150mLを加えています。合計で650mLの溶液となります。

誤:[算出された浸透圧比が4を超えていたので、中心静脈からの投与を依頼した。]
食塩に注目します。
食塩水500mL=500gです。1%なら5gなので、0.9%なら4.5gの食塩が含まれます。また、10%塩化ナトリウム150mLには15g食塩が含まれます。4.5+15=19.5gの食塩が、650mLの溶液中に含まれるということです。これはちょうど3%です。

正:[低ナトリウム血症の更なる悪化は、痙れんや昏睡を起こす可能性があると情報提供した。]
正:[急激な血清ナトリウム値の上昇は、浸透圧性脱髄症候群を起こす可能性があると情報提供した。]
正:[低ナトリウム血症の原因として、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)も考えられると情報提供した。]

◆ 問199

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


誤:[イオン強度は、Na+や Cl- の電荷数に依存しない。]
イオン強度は、以下の式で表されます。

Ziが、i番目のイオンの電荷数なので、イオン強度は電荷数に依存します。選択肢1は誤りです。

正:[イオン強度が高くなると、水中の Na+とCl-の間の相互作用は強くなる。]

誤:[搬送時の血清ナトリウム値と等しい Na+濃度の塩化ナトリウム水溶液のイオン強度は54mmol/Lである。]
イオン強度を計算すれば、1/2×(108×12+108×12)=108です。54ではありません。

正:[塩化ナトリウム水溶液の活量aはa=γ・xで表される。ただし、γは活量係数、xはモル分率である。]

誤:[Na+、Cl-の活量をそれぞれ a+、a-とすると、塩化ナトリウム水溶液の平均活量a±108回問198-199画像1で表される。]
平均活量a±=a+・a-です。1/2が不要です。具体例として、a+、a-が共に1とすると、平均が0.5になるのはおかしいと考えると、判断しやすい選択肢だったかもしれません。