第108回薬剤師国家試験
◆ 問341
37歳女性。以前より右乳房のしこりが気になっていたが、今回職場の検診で改めて指摘され来院した。来院時の身体所見及び検査所見は以下のとおりである。
以上の検査結果から、乳房温存摘除術を施行後、化学療法を組合せた内分泌療法を施行することとなった。


この患者に対する薬物療法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
-
不正出血などの症状を認めた際には直ちに医師や薬剤師に相談するよう患者に指導する。
-
遅発性嘔吐を予防するため、パロノセトロン塩酸塩注射液をプレガバリン口腔内崩壊錠に変更する。
-
心筋障害を予防するため、注射用エピルビシン塩酸塩注射用投与24時間以上前にフィルグラスチム(遺伝子組換え)注射液を投与する。
-
出血性膀胱炎を予防するため、シクロホスファミド水和物注射用投与の当日にメスナを投与する。
-
フルオロウラシル注射液による汎血球減少症を予防するため、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物・L-グルタミン顆粒を投与する。
◆ 問341
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、4
正:[不正出血などの症状を認めた際には直ちに医師や薬剤師に相談するよう患者に指導する。]
タモキシフェンは、重大な副作用として、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖症、子宮内膜症を起こすことがあるため、不正出血などの症状を認めた際には直ちに医師や薬剤師に相談するよう患者に指導する必要がある。
誤:[遅発性嘔吐を予防するため、パロノセトロン塩酸塩注射液をプレガバリン口腔内崩壊錠に変更する。]
パロノセトロン塩酸塩は、半減期の長いセロトニン5-HT3受容体遮断薬であり、抗悪性腫瘍薬投与に伴う遅発性の悪心・嘔吐に有効であるため、変更する必要はない。なお、プレガバリンは、神経障害性疼痛に用いられる。
誤:[心筋障害を予防するため、注射用エピルビシン塩酸塩注射用投与24時間以上前にフィルグラスチム(遺伝子組換え)注射液を投与する。]
エピルビシン塩酸塩は、心筋障害等の重篤な副作用を起こすことがあるため、臨床検査等を行い、患者の状態を十分に観察しながら投与する必要がある。なお、フィルグラスチムは、がん化学療法に伴う好中球減少症に用いられる。
正:[出血性膀胱炎を予防するため、シクロホスファミド水和物注射用投与の当日にメスナを投与する。]
シクロホスファミド水和物は、副作用として出血性膀胱炎を起こすことがあるため、出血性膀胱炎を予防する目的で、シクロホスファミド水和物投与の当日にメスナを投与する。
誤:[フルオロウラシル注射液による汎血球減少症を予防するため、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物・L-グルタミン顆粒を投与する。]
フルオロウラシルは、副作用として骨髄抑制に伴う汎血球減少症を起こすことがあるため、定期的に臨床検査を行う必要がある。なお、アルレンスルホン酸ナトリウム水和物・L-グルタミン顆粒は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎における症状の改善に用いられる。