第109回薬剤師国家試験

◆ 問116

 プリオン病では、プリオンタンパク質(PrP)の感染性を有した異常型が蓄積する。プリオンタンパク質の特徴として、正常型であるPrPcと異常型であるPrPScが相互作用(会合)すると、正常型が異常型へと変換されることが知られている。図1はNMRにより解析されたPrPcの立体構造、図2はPrPScの仮想の立体構造をそれぞれ安定な二次構造をわかりやすくリボン図で描いている。なお、図中には示されていないが、PrPcのC末端にはGPIアンカーが付加されている。
 図3は、PrPの遺伝子配列から予想される翻訳産物をアミノ酸の一文字表記で示している。アミノ酸配列のうち、プロリン残基は黒点(●)で、グリシン残基は2重下線で示している。
 以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
109回問116画像1
109回問116画像2
  • 図2に示すPrPScは、図1に示すPrPcに比べてβシート構造が多い。
  • βシート構造の安定性は、並行するペプチド鎖間で形成されるジスルフィド(S-S)結合によっている。
  • 図3に示すPrPに点在するプロリンは、その環状構造により二次構造の形成とその規則性に影響を与えている。
  • 図3に示すPrPに多く存在するグリシンは、特定の二次構造からループ構造への変化を妨げる要因となっている。
  • PrPcにおいてGPIアンカーが結合するアミノ酸残基は、図3で1番目のメチオニンである。

◆ 問116

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、3


[図2に示すPrPScは、図1に示すPrPcに比べてβシート構造が多い。]
正解です。
βシートとは、隣接するポリペプチド鎖の間で複数の水素結合が形成され、その水素結合によりペプチドが安定化された構造のことである。図2のPrPSrは、図1に示すPrPcに比べ、ペプチド鎖が隣接している構造が多く認められるため、図2に示すPrPScは、図1に示すPrPcに比べてβシート構造が多いと考えられる。



[βシート構造の安定性は、並行するペプチド鎖間で形成されるジスルフィド(S-S)結合によっている。]
誤りです。
βシート構造の安定性は、並行するペプチド鎖間で形成される水素結合による。



[図3に示すPrPに点在するプロリンは、その環状構造により二次構造の形成とその規則性に影響を与えている。]
正解です。
プロリンは、環状構造を有しており、その環状構造が二次構造の形成に制限を与えることで二次構造の規則性に影響を与える。



[図3に示すPrPに多く存在するグリシンは、特定の二次構造からループ構造への変化を妨げる要因となっている。]
誤りです。
グリシンは、側鎖の体積が非常に小さいため、主鎖構造を柔軟にし、特定の二次構造からループ構造への構造変化を起こしやすくする要因となっている。



[PrPcにおいてGPIアンカーが結合するアミノ酸残基は、図3で1番目のメチオニンである。]
誤りです。
 GPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)アンカーとは、細胞表面に存在する様々な機能を有するタンパク質を細胞膜に繋ぎ止める糖脂質のことであり、アミノ酸配列のカルボキシ末端へ結合する。図3のカルボキシ末端は、G(グリシン)であるため、GPIアンカーが結合するアミノ酸残基は、図3でカルボキシ末端のグリシンである。