第109回薬剤師国家試験

◆ 問135

 下図は、化管法*のPRTR制度における2021年(令和3年)度届出排出量・移動量の上位10物質を示したものである。
109回問135画像1
*化管法:特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律
令和3年度PRTRデータの概要-化学物質の排出量・移動量の集計結果-(令和5年3月)を基に作成
 化合物A〜Cは以下のア~オのような特徴をもつ化合物である。化合物A~Cの組合せとして正しいのはどれか。1つ選べ。
ア 化合物A及びCの届出排出量のほぼ全量が大気への排出、化合物Bの届出移動量のほぼ全量が事業所外への廃棄物としての移動である。
イ ヒトの体内で化合物A及びCは酸化的な代謝を受け、それぞれの代謝物がグリシン抱合されて尿中に排泄される。
ウ 化合物A及びCには、室内濃度指針値が定められている。
エ 化合物Bへの曝露により、パーキンソン病様の症状が現れることがある。
オ 化合物Cは、3種類の異性体の混合物である。

109回問135画像2

◆ 問135

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:6


正解は[選択肢6]です。

化管法(化学物質排出把握管理促進法)は、PRTR制度とSDS制度の2つの制度から成り立っています。この法律の目的は、事業者が化学物質を自主的に管理し、環境保全上の問題を未然に防ぐことです。


PRTR制度
PRTR制度では、事業者が自ら化学物質の排出量や移動量を把握し、国がそのデータを集計して公表します。


化合物A: トルエン
トルエンは、届出排出量が最も多い化合物で、ほぼ全量が大気中に排出されます。
ヒト体内では、トルエンはCYP酵素によって酸化されて安息香酸となり、さらにグリシンと結合して馬尿酸となり尿中に排泄されます。
トルエンはシンナーの主成分で、塗料などに使用されますが、曝露によりシックハウス症候群の原因となるため、室内濃度指針値が定められています。


化合物B: マンガン及びその化合物
マンガン及びその化合物は、届出移動量のほぼ全量が事業所外への廃棄物として移動され、その後埋立処分されます。
マンガン及びその化合物に曝露されると、パーキンソン病様症状などの中枢神経障害が現れることがあります。


化合物C: キシレン
キシレンは、届出排出量のほぼ全量が大気中に排出されます。
ヒト体内では、キシレンはCYP酵素によって酸化されてメチル安息香酸となり、さらにグリシンと結合してメチル馬尿酸となり尿中に排泄されます。
キシレンは、オルト・メタ・パラの3種類の異性体の混合物で、毒性はトルエンと類似しており、曝露によりシックハウス症候群の原因となるため、室内濃度指針値が定められています。