第109回薬剤師国家試験

◆ 問152

末梢性筋弛緩薬に関連した記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • スキサメトニウムは、アセチルコリンNM受容体に作用して、運動神経終末を持続的に脱分極させる。
  • スガマデクスは、ロクロニウムによる筋弛緩を回復させる。
  • ベクロニウムの筋弛緩作用は、ネオスチグミンを併用することで増強される。
  • ダントロレンは、骨格筋のリアノジン受容体に作用して、筋小胞体からのCa2+遊離を抑制する。
  • A型ボツリヌス毒素は、電位依存性Na+チャネルを遮断して、運動神経の興奮伝導を抑制する。

◆ 問152

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


正解は[スガマデクスは、ロクロニウムによる筋弛緩を回復させる。]と[ダントロレンは、骨格筋のリアノジン受容体に作用して、筋小胞体からのCa2+遊離を抑制する。]です。

正解の選択肢について解説します。
[スガマデクスは、ロクロニウムによる筋弛緩を回復させる。]
正解です。スガマデクスはロクロニウムと1:1の複合体を形成し、ロクロニウムがアセチルコリン受容体に結合するのを防ぎます。これにより、筋弛緩効果から迅速に回復させることができます。

[ダントロレンは、骨格筋のリアノジン受容体に作用して、筋小胞体からのCa2+遊離を抑制する。]
正解です。ダントロレンは、骨格筋のリアノジン受容体に作用して、筋小胞体からのCa2+遊離を抑制します。これにより筋収縮が抑制され、筋弛緩を引き起こします。

誤っている選択肢について解説します。
[スキサメトニウムは、アセチルコリンNM受容体に作用して、運動神経終末を持続的に脱分極させる。]
スキサメトニウムはアセチルコリンNM受容体に作用し、初期には筋収縮を引き起こした後で脱分極を起こしますが、これは持続的ではありません。スキサメトニウムは脱分極性筋弛緩薬であり、作用が終了すると筋肉は再び感受性を取り戻します。

[ベクロニウムの筋弛緩作用は、ネオスチグミンを併用することで増強される。]
ベクロニウムの筋弛緩作用は、ネオスチグミンを併用することで拮抗され、筋弛緩状態からの回復が促進されます。ネオスチグミンは抗コリンエステラーゼ薬であり、アセチルコリンの分解を阻害することで筋弛緩薬の効果を減少させます。

[A型ボツリヌス毒素は、電位依存性Na+チャネルを遮断して、運動神経の興奮伝導を抑制する。]
A型ボツリヌス毒素は、電位依存性Na+チャネルを遮断するのではなく、神経伝達物質の放出を阻害することで運動神経の興奮伝導を抑制します。具体的には、SNAP-25というタンパク質を切断し、神経伝達物質のシナプス前膜での放出を阻害します。

覚えておくべき用語:
脱分極性筋弛緩薬: スキサメトニウムのように、アセチルコリン受容体に結合し、一時的な筋収縮後に脱分極を引き起こす薬剤。
非脱分極性筋弛緩薬: ロクロニウムやベクロニウムのように、アセチルコリン受容体に競合的に結合し、筋収縮を防ぐ薬剤。
抗コリンエステラーゼ薬: ネオスチグミンのように、アセチルコリンエステラーゼの活性を抑制し、アセチルコリンの濃度を高めることで筋弛緩薬の効果を減少させる薬剤。
リアノジン受容体: 筋小胞体上に存在し、Ca2+の遊離を調節する受容体。ダントロレンはこの受容体を遮断することで筋収縮を抑制します。
SNAP-25: A型ボツリヌス毒素が作用するタンパク質で、神経伝達物質の放出に関与しています。