第109回薬剤師国家試験

◆問157-158

37歳女性。アレルギー疾患の既往歴なし。顔面に紅斑が出現したため、近医を受診し、全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された。ステロイド療法が施行され、病状は落ち着いた。副腎皮質ステロイド性薬の漸減中に、突然、上機嫌になって多弁となったり、急に無表情になったり、「スマートフォンの使い方が分からなくなった。」と困惑して涙ぐんだりする症状が目立つようになった。血液検査の結果は以下のとおりである。
109回問157-158画像1

◆ 問157


◆ 問158

SLE及びその合併症の治療に用いられる薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • シクロホスファミドは、肝臓で代謝されて活性体となり、DNAをアルキル化して、DNAの複製を阻害する。
  • ミゾリビンは、ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害して、チミジル酸の合成を抑制する。
  • タクロリムスは、活性化T細胞核内因子(NFAT)のリン酸化を阻害して、IL-2の産生を抑制する。
  • ミコフェノール酸モフェチルは、体内でミコフェノール酸に加水分解され、プリン塩基の合成を抑制する。
  • ベリムマブは、Bリンパ球細胞膜のCD20に結合して、Bリンパ球の増殖を抑制する。

◆ 問157

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


正解は[副腎皮質ステロイド性薬の漸減中の症状から中枢神経ループスが疑われる。]と[血液検査からループス腎炎が疑われる。]です。

正解の解説は以下の通りです。
[副腎皮質ステロイド性薬の漸減中の症状から中枢神経ループスが疑われる。]
正解です。副腎皮質ステロイド性薬の漸減中に見られる患者の気分の変動や混乱は、中枢神経ループス(CNSループス)を疑わせます。CNSループスは、SLEが脳に影響を及ぼし、さまざまな神経症状を引き起こす状態です。

[血液検査からループス腎炎が疑われる。]
正解です。血液検査で示された異常値(赤血球数、白血球数、血小板数、血清クレアチニン、eGFR)と尿検査結果(尿タンパク(2+)、尿赤血球(+))から、ループス腎炎が疑われます。ループス腎炎は、SLEが腎臓に影響を及ぼし、腎炎を引き起こす状態です。

間違いの選択肢の解説は以下の通りです。
[SLEはI型アレルギーによって発症した。]
誤りです。SLEはI型アレルギーによって発症するものではありません。自己免疫疾患であり、免疫系が自身の組織を攻撃することによって発症します。

[顔面の紅斑は鼻梁から頬にかけて一側性である。]
誤りです。顔面の紅斑が一側性であるかどうかについての情報は提供されていないため、これが正しいとは確認できません。

[血液検査から汎血球減少症が疑われる。]
誤りです。問題文には汎血球減少症を示唆する情報は提供されていません。

覚えておくべき用語:
中枢神経ループス(CNSループス): SLEが脳に影響を及ぼすことによって起こる神経症状。
ループス腎炎: SLEが腎臓に影響を及ぼし、腎炎を引き起こす状態。
これらの用語は、SLEの診断と治療において重要な概念です。患者の症状や検査結果を正しく評価するためには、これらの用語の意味を理解しておく必要があります。

◆ 問158

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


正解は[シクロホスファミドは、肝臓で代謝されて活性体となり、DNAをアルキル化して、DNAの複製を阻害する。]と[ミコフェノール酸モフェチルは、体内でミコフェノール酸に加水分解され、プリン塩基の合成を抑制する。]です。

正解の選択肢についての解説は以下の通りです。
[シクロホスファミドは、肝臓で代謝されて活性体となり、DNAをアルキル化して、DNAの複製を阻害する。]
細胞の増殖が抑制されるため、SLEの治療に有効です。

[ミコフェノール酸モフェチルは、体内でミコフェノール酸に加水分解され、プリン塩基の合成を抑制する。]
ミコフェノール酸モフェチルは、体内でミコフェノール酸に加水分解され、プリン塩基の合成を抑制することで免疫反応を抑制します。これは、特にグアニン合成経路におけるイノシン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)を阻害することにより行われます。

間違いの選択肢についての解説は以下の通りです。
[ミゾリビンは、ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害して、チミジル酸の合成を抑制する。]
ミゾリビンは、ジヒドロ葉酸還元酵素ではなく、イノシン酸デヒドロゲナーゼを阻害し、グアニンの合成を抑制します。

[タクロリムスは、活性化T細胞核内因子(NFAT)のリン酸化を阻害して、IL-2の産生を抑制する。]
タクロリムスは、NFATのリン酸化を阻害するのではなく、カルシニューリンを阻害してNFATの脱リン酸化と核への移動を抑制します。

[ベリムマブは、Bリンパ球細胞膜のCD20に結合して、Bリンパ球の増殖を抑制する。]
ベリムマブは、CD20に結合してB細胞の増殖や生存を抑制しますが、SLE治療に直接使用されるわけではありません。

覚えておくべき用語:
アルキル化: DNAの複製を阻害する化学反応。
イノシン酸デヒドロゲナーゼ (IMPDH): プリン塩基合成経路における重要な酵素。
カルシニューリン: タクロリムスが阻害するタンパク質で、T細胞活性化に関与します。
CD20: B細胞表面のタンパク質で、ベリムマブの標的です。