第109回薬剤師国家試験

◆ 問160

高血圧症に用いられる薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • メチルドパは、延髄の血管運動中枢及び交感神経終末のアドレナリンα2受容体を遮断することで、交感神経活動を抑制する。
  • ラベタロールは、アドレナリンα1受容体及びβ1受容体を遮断することで、血圧を低下させる。
  • テルミサルタンは、傍糸球体細胞のアンジオテンシンⅡAT1受容体を遮断することで、レニン分泌を抑制する。
  • リシノプリルは、アンジオテンシンⅡの生成を抑制し、副腎皮質からのアルドステロン分泌を低下させるため、低カリウム血症を引き起こしやすい。
  • ジルチアゼムは、心臓の電位依存性L型Ca2+チャネルを遮断するため、房室ブロックを誘発しやすい。

◆ 問160

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


正解は[ラベタロールは、アドレナリンα1受容体及びβ1受容体を遮断することで、血圧を低下させる。]と[ジルチアゼムは、心臓の電位依存性L型Ca2+チャネルを遮断するため、房室ブロックを誘発しやすい。]です。

それぞれの選択肢について解説します。
[メチルドパは、延髄の血管運動中枢及び交感神経終末のアドレナリンα2受容体を遮断することで、交感神経活動を抑制する。]
誤りです。メチルドパは、アドレナリンα2受容体を刺激することで交感神経活動を抑制します。遮断するのではなく、中枢神経系に作用して血圧を下げる薬剤です。

[ラベタロールは、アドレナリンα1受容体及びβ1受容体を遮断することで、血圧を低下させる。]
正解です。血管の拡張と心拍数の減少をもたらし、結果として血圧を下げる作用があります。

[テルミサルタンは、傍糸球体細胞のアンジオテンシンⅡAT1受容体を遮断することで、レニン分泌を抑制する。]
誤りです。テルミサルタンは、アンジオテンシンⅡAT1受容体を遮断することで、血圧を下げますが、レニン分泌を抑制するのではなく、増加させる可能性があります。AT1受容体の遮断はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の負のフィードバックを取り除き、レニン活性が増加するためです。

[リシノプリルは、アンジオテンシンⅡの生成を抑制し、副腎皮質からのアルドステロン分泌を低下させるため、低カリウム血症を引き起こしやすい。]
誤りです。リシノプリルは、アンジオテンシンⅡの生成を抑制することで血圧を下げますが、低カリウム血症を引き起こすのではなく、高カリウム血症を引き起こすリスクがあります。これは、アルドステロン分泌の抑制によりナトリウム排泄が増加し、カリウムの保持が起こるためです2。

[ジルチアゼムは、心臓の電位依存性L型Ca2+チャネルを遮断するため、房室ブロックを誘発しやすい。]
正解です。ジルチアゼムは、心臓の電位依存性L型Ca2+チャネルを遮断することで、心筋の収縮力を減少させ、心拍数を減少させます。これにより、房室ブロックのリスクが高まります。

覚えておくべき用語は以下の通りです。
アドレナリン受容体: 血圧調節に関与する受容体で、αとβのサブタイプがあります。
カルシウムチャネル遮断薬: 心臓や血管のカルシウムチャネルを遮断し、血圧を下げる薬剤群です。
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系: 血圧調節に重要な役割を果たすホルモン系です。この系統の薬剤は、高血圧治療において重要な位置を占めています。