第109回薬剤師国家試験

◆問165-166

50歳女性。5年前に近医にて高血圧を指摘され、アムロジピン5mg/日を服用していた。最近の血圧は155/95mmHg程度と高値が持続しており、頭痛や脱力を自覚し今回受診した。二次性高血圧が疑われたため、腹部CT検査が実施されて左副腎に腫瘍を認めたが、血中コルチゾール値や血中カテコールアミン値の上昇は認めなかった。

◆ 問165

この患者にスピロノラクトンが投与されることになった。スピロノラクトンに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • 上皮性Na+チャネルの発現を増加させる。
  • アルドステロン誘導タンパク質の生合成を抑制する。
  • 腎尿細管におけるNa+,K+-ATPaseの発現を増加させる。
  • 腎尿細管におけるK+分泌を促進する。
  • 抗アンドロゲン作用を示す。

◆ 問166


◆ 問165

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


スピロノラクトンに関する記述で正しいのは、
[アルドステロン誘導タンパク質の生合成を抑制する。]
[抗アンドロゲン作用を示す。]
です。

それぞれの選択肢について解説します。
[上皮性Na+チャネルの発現を増加させる。]
スピロノラクトンが上皮性Na+チャネルの発現を増加させると述べていますが、実際にはスピロノラクトンはこれを抑制します。

[アルドステロン誘導タンパク質の生合成を抑制する。]
スピロノラクトンはアルドステロン受容体の競合的拮抗薬であり、アルドステロン誘導タンパク質の生合成を抑制します。これにより、ナトリウムの再吸収を減少させ、カリウムの排泄を抑制することで利尿作用を発揮します。

[腎尿細管におけるNa+,K+-ATPaseの発現を増加させる。]
Na+,K+-ATPaseの発現を増加させると述べていますが、スピロノラクトンはこの酵素の活性に直接作用するわけではありません。

[腎尿細管におけるK+分泌を促進する。]
スピロノラクトンがK+分泌を促進すると述べていますが、実際にはスピロノラクトンはカリウムの排泄を抑制します。

[抗アンドロゲン作用を示す。]
スピロノラクトンはアンドロゲン受容体にも結合し、アンドロゲンの影響を減少させる抗アンドロゲン作用を示します。これは、女性型脱毛症(FAGA)の治療において利用されることがあります。

覚えておくべき用語は以下の通りです:
アルドステロン受容体拮抗薬:アルドステロンの作用を阻害する薬剤。
抗アンドロゲン作用:アンドロゲン受容体をブロックし、アンドロゲンの作用を減少させる作用。

◆ 問166

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、5


正解は[カリウム値]と[レニン活性低値]です。
この症例では、左副腎に腫瘍が見つかりましたが、血中コルチゾール値や血中カテコールアミン値の上昇は認められませんでした。これは、腫瘍が機能していないことを示唆しています。

それぞれの選択肢について解説します。
[カリウム値]
副腎腫瘍が原因で発生する二次性高血圧の一つに、原発性アルドステロン症があります。この病態では、アルドステロンの過剰分泌によりナトリウムの再吸収が促進され、カリウムの排泄が増加します。その結果、血中のカリウム値が低下することが一般的です。

[カルシウム高値]
この症例ではカルシウムの値について言及がなく、副腎腫瘍と高カルシウム血症の直接的な関連は示されていません。

[LDLコレステロール高値]
LDLコレステロールの高値は、高血圧とは直接的な関連はありません。また、この症例ではLDLコレステロール値についての言及もありません。

[遊離チロキシン(FT4)高値]
遊離チロキシンの値は甲状腺機能と関連しており、副腎腫瘍とは直接的な関連はありません。

[レニン活性低値]
原発性アルドステロン症では、アルドステロンの過剰により血圧が上昇し、それに反応してレニンの分泌が抑制されます。そのため、レニン活性が低下するのが典型的な所見です。