第109回薬剤師国家試験

◆ 問170

下図はイトラコナゾールカプセル200mgを健常人男性(21~28歳)12名に経口投与した際の血中濃度(平均値)の時間推移を示す。イトラコナゾールの最高血中濃度はファモチジンとともに服用した場合、53%に減少した。イトラコナゾールの吸収過程におけるファモチジンとの相互作用及びその回避法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
109回問170画像1
  • イトラコナゾールがファモチジンと難溶性のキレートを形成するため、吸収が低下する。
  • ファモチジンがP-糖タンパク質によるイトラコナゾールの分泌を阻害するため、吸収が低下する。
  • ファモチジンの作用により胃内pHが上昇し、イトラコナゾールの溶解性が低下するため、吸収が低下する。
  • ファモチジンの代替薬としてオメプラゾールを検討する。
  • イトラコナゾール製剤として経口液剤を検討する。

◆ 問170

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


正解は
[ファモチジンの作用により胃内pHが上昇し、イトラコナゾールの溶解性が低下するため、吸収が低下する。]と
[イトラコナゾール製剤として経口液剤を検討する。]
です。

[イトラコナゾールがファモチジンと難溶性のキレートを形成するため、吸収が低下する。]
誤りです。イトラコナゾールとファモチジンが難溶性のキレートを形成するという報告はありません。キレート形成は、ある物質が金属イオンなどと複合体を形成することを指しますが、この場合は関連がありません。

[ファモチジンがP-糖タンパク質によるイトラコナゾールの分泌を阻害するため、吸収が低下する。]
誤りです。P-糖タンパク質は薬物の細胞外への輸送を促進する膜タンパク質ですが、ファモチジンがP-糖タンパク質によるイトラコナゾールの分泌を阻害するという報告はありません。

[ファモチジンの作用により胃内pHが上昇し、イトラコナゾールの溶解性が低下するため、吸収が低下する。]と
ファモチジンはH2受容体拮抗薬であり、胃酸の分泌を抑制します。これにより胃内のpHが上昇し、酸性環境で溶解性が高いイトラコナゾールの溶解性が低下するため、吸収が減少します。このため、ファモチジンと同時に服用するとイトラコナゾールの血中濃度が低下することが知られています。

[ファモチジンの代替薬としてオメプラゾールを検討する。]
誤りです。オメプラゾールも胃酸分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬であり、ファモチジンと同様の問題が生じる可能性があるため、代替薬としては適切ではありません。

[イトラコナゾール製剤として経口液剤を検討する。]
イトラコナゾールの経口液剤は、固形製剤に比べて胃酸依存性が少ないため、胃内pHの上昇が吸収に与える影響が少なく、より一貫した吸収が期待できます。

覚えておくべき用語:
H2受容体拮抗薬: 胃酸の分泌を抑制する薬剤。
キレート: ある物質が金属イオンなどと複合体を形成すること。
P-糖タンパク質: 薬物などの分子を細胞外へ輸送する膜タンパク質。