第109回薬剤師国家試験

◆ 問173

薬物のみかけの分布容積とその変動に関与する血漿タンパク結合に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • みかけの分布容積は、体内薬物量と血漿中薬物濃度の平衡定数として定義される。
  • 特定の臓器や細胞内小器官(核やリソソーム、ミトコンドリアなど)に分布する薬物は、体重1kgあたりの分布容積が10Lを越えることがある。
  • 脂溶性の高い薬物の分布容積は加齢に伴って減少する。
  • 血漿タンパク結合率が高い薬物のみかけの分布容積は体内水分量とほぼ等しい。
  • タンパク非結合型薬物の濃度は、定常状態において血漿中と組織間隙液中との間でほぼ等しい。

◆ 問173

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


正解の選択肢は以下の通りです。
[特定の臓器や細胞内小器官(核やリソソーム、ミトコンドリアなど)に分布する薬物は、体重1kgあたりの分布容積が10Lを越えることがある。]
正解です。薬物が特定の組織や細胞内小器官に高度に局在する場合、非常に高い分布容積を示すことがあるため正しいです。例えば、脂肪組織に集中して分布する脂溶性の高い薬物は、体内での見かけの分布容積が非常に大きくなることがあります。

[タンパク非結合型薬物の濃度は、定常状態において血漿中と組織間隙液中との間でほぼ等しい。]
正解です。タンパクに結合していない薬物(非結合型薬物)は、血漿と組織間隙液の間で自由に移動できるため、定常状態では両者の間で濃度がほぼ等しくなります。


他の選択肢については、以下の理由で誤りです。
[みかけの分布容積は、体内薬物量と血漿中薬物濃度の平衡定数として定義される。]
誤りです。分布容積は、体内薬物量を血漿中薬物濃度で除した値であり、平衡定数ではありません。

[脂溶性の高い薬物の分布容積は加齢に伴って減少する。]
誤りです。脂溶性薬物の分布容積は、脂肪組織の量や脂肪の性質によって変わる可能性がありますが、必ずしも加齢と直接関連するわけではありません。

[血漿タンパク結合率が高い薬物のみかけの分布容積は体内水分量とほぼ等しい。]
誤りです。血漿タンパク結合率が高い薬物は、結合していない薬物の量が少なくなるため、分布容積が小さくなる傾向があります。

覚えておくべき用語は以下の通りです:
分布容積(Vd):薬物が体内でどの程度分布しているかを示す指標で、体内薬物量を血漿中薬物濃度で除した値です。
血漿タンパク結合率:薬物が血漿中のタンパク質にどの程度結合しているかを示す割合です。
非結合型薬物:タンパク質に結合していない薬物で、血漿と組織間隙液の間で自由に移動できます。定常状態では、これらの間で濃度がほぼ等しくなります。