第109回薬剤師国家試験

◆ 問174

薬物代謝酵素の遺伝子多型に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • CYP2C19の遺伝子多型によってオメプラゾールの血中濃度時間曲線下面積(AUC)は変化するが、代謝物のAUCは変化しない。
  • CYP2D6の遺伝子多型が関与するイミプラミンのpoor metabolizer(PM)では、活性代謝物の血中濃度が高い。
  • アザチオプリンを使用する前には、UDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)の遺伝子多型の診断が行われている。
  • N-アセチル転移酵素(NAT2)には遺伝子多型が存在し、日本人では約10%がイソニアジドのアセチル化反応速度が速い群に属する。
  • アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)はPMの頻度に人種差があり、白人と比べて日本人ではPMの出現率が高い。

◆ 問174

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


正しい記述は2と5です。
[CYP2D6の遺伝子多型が関与するイミプラミンのpoor metabolizer(PM)では、活性代謝物の血中濃度が高い。]
正しいです。CYP2D6の遺伝子多型により、PMの個体ではこの酵素の活性が低下または欠損しており、イミプラミンのような薬物の代謝が遅れるため、活性代謝物の血中濃度が高くなります。これは、PMの個体では薬物の効果が強く出るか、または副作用が発生しやすいことを意味します。
[アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)はPMの頻度に人種差があり、白人と比べて日本人ではPMの出現率が高い。]
正しいです。ALDH2の遺伝子多型は特に東アジア人に多く見られ、アルコール代謝に大きな影響を与えます。PMの個体ではアセトアルデヒドの分解が遅れるため、飲酒後に顔の赤み(フラッシング)などの反応が起こりやすくなります。



誤りの選択肢については以下の通りです。
[CYP2C19の遺伝子多型によってオメプラゾールの血中濃度時間曲線下面積(AUC)は変化するが、代謝物のAUCは変化しない。]
誤りです。CYP2C19の遺伝子多型はオメプラゾールのAUCだけでなく、代謝物のAUCにも影響を与えます。

[アザチオプリンを使用する前には、UDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)の遺伝子多型の診断が行われている。]
誤りです。アザチオプリンの使用前には、TPMT(チオプリンメチルトランスフェラーゼ)の遺伝子多型の診断が一般的です。UGT1A1は主にイリノテカンのような他の薬剤の代謝に関与しています。

[N-アセチル転移酵素(NAT2)には遺伝子多型が存在し、日本人では約10%がイソニアジドのアセチル化反応速度が速い群に属する。]
誤りです。NAT2の遺伝子多型により、日本人の約50%がイソニアジドのアセチル化反応速度が速い群に属します。

覚えておくべき用語:
Poor Metabolizer (PM): 薬物代謝酵素の活性が低いまたは欠損している個体。
Extensive Metabolizer (EM): 薬物代謝酵素の活性が正常な個体。