第109回薬剤師国家試験

◆ 問175

下表には薬物の肝抽出率及び血漿タンパク結合率を示す。これら3種の物の体内動態の変動に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
109回問175画像1
  • ニカルジピンの肝クリアランスは、肝血流量による影響を受けない。
  • ニカルジピンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝血流量が一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けない。
  • フェニトインとテオフィリンの肝クリアランスは、いずれも肝固有クリアランスの変動の影響を受けやすい。
  • 血漿タンパク質の減少による肝クリアランスへの影響は、フェニトインよりテオフィリンの方が大きい。
  • フェニトインとテオフィリンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝固有クリアランスが一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けない。

◆ 問175

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


それぞれの選択肢を解説します。
[フェニトインとテオフィリンの肝クリアランスは、いずれも肝固有クリアランスの変動の影響を受けやすい。]
正解です。肝固有クリアランスは、肝臓の代謝酵素の活性に依存しており、肝抽出率が低い薬物(Eh<0.3)は、肝臓での代謝酵素の活性によってクリアランスが大きく影響されます。フェニトインとテオフィリンは肝抽出率が低いため、肝固有クリアランスの変動によってクリアランスが大きく変わる可能性があります。

[フェニトインとテオフィリンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝固有クリアランスが一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けない。]
正解です。肝固有クリアランスが一定である場合、血漿タンパク結合率の変動は非結合形薬物濃度に影響を与えません。これは、非結合形薬物のみが肝臓で代謝されるためです。血漿タンパク結合率が変わっても、非結合形薬物の量は変わらないため、定常状態の非結合形薬物濃度には影響しません。

[ニカルジピンの肝クリアランスは、肝血流量による影響を受けない。]
誤りです。ニカルジピンは高い肝抽出率を持つ薬物であり、その肝クリアランスは肝血流量に大きく依存します。肝血流量が増加すると、肝抽出率が高い薬物の肝クリアランスも増加するため、肝血流量の変動はニカルジピンの肝クリアランスに影響を与えます。

[ニカルジピンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝血流量が一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けない。]
誤りです。ニカルジピンは肝抽出率が高い薬物であるため、血漿タンパク結合率の変動は非結合形薬物濃度に影響を与えます。血漿タンパク結合率が低下すると、非結合形薬物の割合が増加し、結果として肝クリアランスが増加する可能性があります。

[血漿タンパク質の減少による肝クリアランスへの影響は、フェニトインよりテオフィリンの方が大きい。]
誤りです。フェニトインは高い血漿タンパク結合率を持ち、そのために血漿タンパク質の減少はフェニトインの肝クリアランスに大きな影響を与えます。一方で、テオフィリンは比較的低い血漿タンパク結合率を持つため、血漿タンパク質の減少がフェニトインほどの影響を与えることはありません。

覚えておくべき用語:
肝抽出率(Eh): 薬物が肝臓を通過する際にどの程度抽出されるかを示す率です。Ehが高い薬物は肝血流量に依存し、Ehが低い薬物は肝固有クリアランスに依存します。
血漿タンパク結合率: 薬物分子が血漿中のタンパク質にどの程度結合しているかを示す割合です。結合していない薬物(非結合型薬物)のみが生理活性を示し、代謝や排泄の対象となります。
肝固有クリアランス: 肝臓の代謝酵素の活性に依存するクリアランスで、肝抽出率が低い薬物のクリアランスを決定します。