第109回薬剤師国家試験

◆問204-205

72歳女性。近医で2年前に高血圧症及びうつ病と診断され、薬物治療が開始された。1年前から動作緩慢となり、右上肢と左下肢に振戦を自覚するようになった。最近、振戦が強くなったため総合病院を受診したところ、パーキンソン病が疑われた。担当医は、パーキンソン病の診断を裏付けるためイオフルパン(123I)注射液によるドパミントランスポーターシンチグラフィーを数週間後に施行することにした。担当医は薬剤師に、検査に関する注意事項の説明を依頼した。薬剤師がお薬手帳を確認したところ、以下の記載があった。
109回問204-205画像1

◆ 問204

薬剤師が患者にする説明として適切なのはどれか。 2つ選べ。
  • 検査結果に影響を与えるため、検査前24時間は食事を控えてください。
  • トリクロルメチアジド錠は検査結果に影響を与えることがあるので、休薬をするかどうか医師と協議します。
  • 撮影前後はできるだけ水分摂取を制限し、排尿を避けてください。
  • 検査薬は検査当日しか使用できないので、確実に検査できる日を予約してください。
  • 検査薬を注射してから、数時間後に頭部の撮影を実施するので、検査に少し時間がかかります。

◆ 問205


◆ 問204

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:4、5


正解の選択肢は以下の通りです。
[検査薬は検査当日しか使用できないので、確実に検査できる日を予約してください。]
[検査薬を注射してから、数時間後に頭部の撮影を実施するので、検査に少し時間がかかります。]


誤りの選択肢は以下の通りです。
[検査結果に影響を与えるため、検査前24時間は食事を控えてください。]
誤りです。イオフルパン(123I)注射液によるドパミントランスポーターシンチグラフィー検査前に食事を控える必要は一般的にはありません。

[トリクロルメチアジド錠は検査結果に影響を与えることがあるので、休薬をするかどうか医師と協議します。]
誤りです。トリクロルメチアジド錠は検査結果に影響を与えません。

[撮影前後はできるだけ水分摂取を制限し、排尿を避けてください。]
誤りです。撮影前後に水分摂取を制限したり、排尿を避けたりする必要はありません。実際には、検査後に放射性薬剤を体外に排出するために水分摂取が推奨されます。

覚えておくべき用語:
イオフルパン(123I):ドパミントランスポーターシンチグラフィーに使用される放射性薬剤です。
ドパミントランスポーターシンチグラフィー:パーキンソン病の診断に用いられる検査法です。

◆ 問205

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、2


正解の選択肢を解説します。
[123Iから放出されるγ線を検出する。]
イオフルパン(123I)は、放射性同位体ヨウ素-123を含み、これが放出するγ線をSPECTで検出します。このγ線は、イオフルパンがドパミントランスポーターに結合した後の分布を示すため、脳内のドパミントランスポーターの分布を画像化するのに使用されます。

[SPECTは、放射型のCTの一種である。]
SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)は、放射性薬剤から放出される単一の光子を検出して断層画像を作成する技術です。これは放射線を利用したCT(Computed Tomography)の一種であり、脳や他の臓器の3次元的な画像を提供します。


誤りの選択肢を解説します。
[放出される2本の消滅放射線を同時計測する。]
これはPET(Positron Emission Tomography)の原理であり、SPECTでは使用されません。SPECTはγ線を検出しますが、PETは陽電子と電子の消滅によって生じる2本のγ線を同時に検出します。

[イオフルパン(123I)注射液は、病院内のサイクロトロンで製造する必要がある。]
イオフルパン(123I)は特別な設備で製造される必要がありますが、必ずしも病院内のサイクロトロンで製造されるわけではありません。通常は専門の放射性医薬品製造施設で製造されます。

[ドパミントランスポーターに結合しなかった遊離の123Iを測定する。]
SPECTでは、ドパミントランスポーターに結合したイオフルパン(123I)の分布を測定します。遊離の123Iは、画像の背景ノイズとなり、測定の対象ではありません。


覚えておくべき用語:
γ線: 放射性同位体が不安定な状態から安定な状態へ移行する際に放出される高エネルギーの電磁波。
SPECT: 放射性薬剤から放出されるγ線を検出して、体内の断層画像を作成する画像診断技術。
ドパミントランスポーター: ドパミン神経細胞の終末に存在し、ドパミンの再取り込みを担うタンパク質。