第109回薬剤師国家試験

◆問206-207

64歳男性。身長168cm、体重62kg。血圧135/80mmHg。飲酒習慣あり。パーキンソン病及び高血圧症と診断され、処方1及び処方2の薬剤を服用中である。最近、パーキンソン病が進行し、wearing-off現象を頻回に起こすようになったため、処方3が追加となり、患者家族が薬局に処方箋を持参した。
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◆ 問206

処方3の薬剤の服用開始にあたり、薬剤師の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
  • レボドパ製剤を1日3錠から1錠へ減量するように医師に提案する。
  • アムロジピン錠の中止を医師に提案する。
  • チーズ、ビール、赤ワインを大量に摂取した場合、血圧上昇を起こす可能性があることを患者家族に説明する。
  • 幻覚があらわれた場合、すぐに病院を受診するように患者家族に説明する。
  • wearing-off現象が改善したら、処方3を中止してよいことを患者家族に説明する。

◆ 問207


◆ 問206

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、4


それぞれの選択肢を解説します。
[レボドパ製剤を1日3錠から1錠へ減量するように医師に提案する。
]
不適切です。レボドパ製剤はドーパミン前駆体であり、パーキンソン病患者におけるドーパミンの不足を補うことで、震え、固縮、運動の遅さなどの症状を改善します。セレギリン塩酸塩はレボドパ製剤の効果を延長し、wearing-off現象を減少させることであることからも減量は適切ではありません。

[アムロジピン錠の中止を医師に提案する。
]
不適切です。アムロジピンは高血圧治療に使用される薬剤です。セレギリンはMAO-B阻害剤であり、高血圧治療に直接関与する薬剤ではないため、アムロジピンの治療を中止する根拠にはなりません。


[チーズ、ビール、赤ワインを大量に摂取した場合、血圧上昇を起こす可能性があることを患者家族に説明する。
]
適切です。セレギリンはMAO-B阻害剤であり、チーズやビール、赤ワインなどのチラミンを多く含む食品を大量に摂取すると、高血圧の危険があるため、患者家族にはこれらの食品の摂取に関して注意を促す必要があります。これは「チーズ効果」とも呼ばれる現象です。

[幻覚があらわれた場合、すぐに病院を受診するように患者家族に説明する。
]
適切です。セレギリンの副作用として幻覚が報告されているため、このような症状が現れた場合には、すぐに医療機関を受診するよう患者家族に指導することが重要です。

[wearing-off現象が改善したら、処方3を中止してよいことを患者家族に説明する。]
不適切です。症状が一時的に改善されたからといって、医師の指示なしに薬を中止することは、症状の再発や悪化を招く恐れがあります。パーキンソン病は現在のところ治癒する病気ではなく、症状の管理と進行の遅延が治療の主な目的です。

覚えておくべき用語:
チーズ効果: MAO阻害剤を服用している患者がチラミンを多く含む食品を摂取した際に高血圧を引き起こす可能性がある現象。
wearing-off現象: パーキンソン病の治療薬であるレボドパの効果が徐々に短くなり、薬の効果が切れる前に症状が再び現れる現象。

◆ 問207

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


[反応①において、FADは還元剤として働く。]
誤りです。実際には、FADは酸化剤として働き、ドパミンから水素を受け取りながら還元される過程でFADH2に変換されます。

[反応②は、置換反応である。]
誤りです。この反応は、FADが還元される酸化還元反応であり、置換反応ではありません。

[反応③において、カテコール骨格をもつイミンが生成する。]
正しいです。ドパミンがMAOBによって代謝される過程で、FADを補酵素として使用し、カテコール骨格を持つイミンが生成されます。これは、ドパミンの酸化反応によって生じる中間体です。

[反応④で生成する「代謝物」は、カテコール骨格をもつ第一級アミンである。]
誤りです。この反応で生成されるのは、カテコール骨格を持たないアルデヒド構造を持つ代謝物です。

[セレギリンは炭素ウで補酵素と共有結合を形成する。]
正しいです。セレギリンはMAOBの阻害剤であり、FADと共有結合を形成することで、MAOBの活性を不可逆的に阻害します。この共有結合は、セレギリンがMAOBの活性部位に結合し、その活性を失わせるためのものです。

覚えておくべき用語:
MAOB (モノアミンオキシダーゼB): ドパミンなどのモノアミン類を代謝する酵素。
FAD (フラビンアデニンジヌクレオチド): 酸化還元反応に関与する補酵素。
セレギリン: MAOBを不可逆的に阻害する薬剤。パーキンソン病の治療に使用されます。