第109回薬剤師国家試験

◆問228-229

70歳男性と60歳女性の夫婦。2人で、打たせ湯のある温泉施設に日帰り旅行へ行ったところ、翌日夜に女性は全身倦怠感と頭痛を伴う発熱の症状を呈したが、自宅療養し、2日後に回復した。一方、男性は旅行から帰った5日後に発熱し、呼吸困難感、湿性咳嗽と胸痛の症状が見られたため、医療機関を受診したところ、肺炎と診断され入院となった。男性は身長165cm、体重53kg。入院時の各種検査結果は以下のとおりである。さらに、この男性が罹患している疾病に関して、尿中抗原検査及び喀痰の遺伝子増幅法検査を追加で施行した結果、いずれも陽性となった。夫婦は同じ病原体に罹患し、女性はポンティアック熱であったと考えられた。
109回問228-229画像1

◆ 問228

この男性患者に対する治療薬として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
  • レボフロキサシン
  • オセルタミビル
  • アモキシシリン
  • セフジニル
  • ニルマトレルビル・リトナビル

◆ 問229


◆ 問228

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1


男性患者はレジオネラ症を発症していると考えられます。レジオネラ症はレジオネラ属の細菌によって引き起こされる疾病で、特にレジオネラ・ニューモフィラが原因であることが多いです。この細菌は水源に存在し、温泉施設のような場所で感染することがあります。
上記を踏まえてそれぞれの選択肢を確認しましょう。

[レボフロキサシン]
正解です。レボフロキサシンはレジオネラ症に対して効果的な抗生物質です。フルオロキノロン系の抗生物質であり、レジオネラ属に対して広範囲にわたる殺菌作用を持っています。したがって、この患者には最も適切な治療薬とされます。

[オセルタミビル]
誤りです。オセルタミビルはインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス薬であり、細菌感染には使用されません。

[アモキシシリン]
誤りです。アモキシシリンは広範囲に作用するペニシリン系の抗生物質ですが、レジオネラ症には推奨されません。

[セフジニル]
誤りです。セフジニルも広範囲に作用するセファロスポリン系の抗生物質ですが、レジオネラ症には最適ではありません。

[ニルマトレルビル・リトナビル]
誤りです。ニルマトレルビル・リトナビルはCOVID-19に対する抗ウイルス薬であり、細菌感染症には適していません。

◆ 問229

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、3


この男性患者が罹患した疾病は、レジオネラ症であると考えられます。
よって正解の選択肢は以下の2つです。
[高齢者や免疫力の低下した人がかかる日和見感染症である。]
正解です。レジオネラ症は高齢者や免疫力の低下した人に多く見られる疾病であり、日和見感染症の一種です。

[ビル空調機の循環冷却水や加湿器から発生するエアロゾルを吸入することで集団発生しやすい。]
正解です。レジオネラ症はビルの空調機の循環冷却水や加湿器から発生するエアロゾルを吸入することで感染し、集団発生することが知られています。



誤りの選択肢は以下の通りです。
[感染症法(注)において三類感染症に分類される。]
誤りです。レジオネラ症は感染症法において五類感染症に分類されます。

[罹患者の飛沫によって、直接他者へ感染する。]
誤りです。レジオネラ症は飛沫感染ではなく、主に水蒸気やエアロゾルを介して感染します。

[ワクチン接種により予防することができる。]
誤りです。現在、レジオネラ症に対するワクチンは存在しませんので、ワクチン接種による予防はできません。