第109回薬剤師国家試験

◆問230-231

 56歳男性。30歳から印刷会社に勤務している。6ヶ月ごとに実施される特定化学物質健康診断を受診したところ、第一次検査の結果は以下のとおりであった。
109回問230-231画像1
 第二次検査として、腹部の超音波による検査等の画像検査、呼気中の一酸化炭素量の測定、血清間接ビリルビン及び血液中の腫瘍マーカーの検査を受けた。
109回問230-231画像2
 画像検査で胆道に腫瘍が見つかった。

◆ 問230


◆ 問231

この男性は第二次検査の結果から、最終的に胆道がんと診断された。その原因となった可能性が高いと考えられる化学物質はどれか。2つ選べ。
109回問230-231画像3

◆ 問230

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:4


正解の選択肢[CA19-9(carbohydrate antigen 19-9)]は、胆道がんの診断において最も一般的に使用される腫瘍マーカーです。[CA19-9]は、特に胆道がんの場合に増加することが知られており、患者の血液中で高いレベルが検出されると、胆道がんの存在を示唆する重要な指標となります。


他の誤りの選択肢については以下の通りです。
[NSE(neuron specific enolase)]は、主に神経系の腫瘍や小細胞肺がんのマーカーとして使用されます。
[PSA(prostate specific antigen)]は、前立腺がんのマーカーとして知られています。
[CYFRA21-1(cytokeratin 19 fragment antigen)]は、非小細胞肺がんなどの診断に用いられることがあります。
[SCC抗原(squamous cell carcinoma related antigen)]は、扁平上皮がんのマーカーとして使用されます。

◆ 問231

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、3


この男性が胆道がんと診断された原因となった可能性が高い化学物質は、[選択肢1:ジクロロメタン]と[選択肢3:1,2-ジクロロプロパン]です。
これらの物質は、印刷業で使用される塩素系有機溶剤の主成分であり、長期間の高濃度ばく露が胆管がんの発症に関連していると考えられています。


[選択肢2:o-トルイジン]...膀胱がんの症例が報告された物質で、染料を作る原料やシアノアクリレート系接着剤(いわゆる瞬間接着剤)の硬化促進剤として使われます。
[選択肢4:4,4′-メチレンビス]...膀胱がんの症例が報告された物質で、防水材に使われるポリウレタンの硬化剤として利用されます。
[選択肢5:ジクロルボス]...有機リン化合物でコリンエステラーゼ阻害作用がありますが、発がん性の症例はありません。家庭用殺虫剤の有効成分として利用されます。
これらは胆道がんとの関連が報告されていないため、不正解です。