第109回薬剤師国家試験

◆問238-239

70歳男性。同居している息子夫婦に付き添われて来局。20歳の頃より喫煙習慣があり(ブリンクマン指数:1,200)、現在も1日に10本程度喫煙している。また職業上の粉じん曝露歴があった。数年前より労作時の息切れが出現し、徐々に症状が悪化したために近医を受診し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断され、以下の処方が出された。
109回問238-239画像1

◆ 問238


◆ 問239

この男性は現在も喫煙を続けていることから、息子夫婦から、喫煙が健康に及ぼす影響を父親に説明してほしいとの依頼があった。薬剤師がこの男性に対して行う、「喫煙と健康」に関して説明する内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
  • COPDの最大のリスク要因は喫煙である。
  • 受動喫煙は虚血性心疾患や脳卒中のリスクを高める心配はない。
  • たばこの発がん物質は主流煙に多く含まれており、副流煙にはほとんど存在しない。
  • 能動喫煙の防止を目的として、健康増進法が制定されている。
  • 喫煙によって薬物代謝酵素が誘導され、効果に影響が出る薬もある。

◆ 問238

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、5


チオトロピウム臭化物は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に使用される抗コリン薬です。この薬は気管支を拡張させることで呼吸を楽にしますが、副作用があります。
正解の選択肢は以下の通りです。
[排尿障害]: 抗コリン薬は尿道括約筋の緊張を減少させることがあり、排尿困難や尿保留を引き起こす可能性があります。これは特に前立腺肥大がある男性において顕著です。

[口渇]: 抗コリン薬は唾液腺の分泌を抑制するため、口渇を引き起こすことが一般的です。



誤りの選択肢は以下の通りです。
[徐脈]: 抗コリン薬は通常、心拍数を増加させる作用があるため、徐脈は一般的な副作用ではありません。

[口腔内カンジダ症]: これは吸入ステロイドによく見られる副作用であり、抗コリン薬には一般的ではありません。

[下痢]: 抗コリン薬は腸の運動を減少させるため、便秘を引き起こす可能性がありますが、下痢は一般的な副作用ではありません。

◆ 問239

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、5


正解の選択肢について、解説します。
[COPDの最大のリスク要因は喫煙である。]
正解です。喫煙はCOPDの発症に最も強く関連しているリスク要因です。喫煙によって肺の炎症が引き起こされ、長期間にわたる損傷が肺の機能低下を招きます。

[喫煙によって薬物代謝酵素が誘導され、効果に影響が出る薬もある。]
正解です。喫煙は肝臓での薬物代謝酵素の活性を高めることが知られており、これにより一部の薬物の代謝が速くなり、その薬の血中濃度が低下し効果が減少する可能性があります。



誤りの選択肢について、解説します。
[受動喫煙は虚血性心疾患や脳卒中のリスクを高める心配はない。]
誤りです。受動喫煙もまた、虚血性心疾患や脳卒中のリスクを高めることが多くの研究で示されています。

[たばこの発がん物質は主流煙に多く含まれており、副流煙にはほとんど存在しない。]
誤りです。副流煙にも発がん物質が含まれており、実際には主流煙よりも多くの有害物質を含むことがあります。

[能動喫煙の防止を目的として、健康増進法が制定されている。]
誤りです。健康増進法は、能動喫煙だけでなく受動喫煙の防止も目的としています。また、法律は喫煙の防止だけでなく、健康全般の増進を目的として制定されています。