第109回薬剤師国家試験

◆問250-251

50歳男性。会社員。人事異動で1年前に本社の営業課長を命じられた。しかし仕事に順応できず、ストレス、不安感及び過食が3ヶ月続いた。上司のすすめもあり心療内科を受診し、うつ病と診断され以下の処方1で治療中である。
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内服開始後、特に副作用は現れていないが、十分な効果が認められないため、医師は処方に新たに薬剤を追加して併用療法を行いたいと考えている。なお、男性は現在排尿障害を伴う前立腺肥大症で処方2を内服中である。
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◆ 問250

この患者に対して禁忌ではなく、併用療法として用いることができる薬物はどれか。1つ選べ。
  • アミトリプチリン
  • アリピプラゾール
  • マプロチリン
  • ミルナシプラン
  • クロミプラミン

◆ 問251


◆ 問250

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2


正解は[アリピプラゾール]です。以下にその理由を説明します。
[アリピプラゾール]は、抗精神病薬の一種で、うつ病の治療において他の抗うつ薬と併用されることがあります。エスシタロプラム単独で効果が不十分な場合、アリピプラゾールを追加することで、セロトニンとドーパミンのバランスを改善し、うつ病の症状をより効果的に治療することができます。


他の選択肢については、以下の理由で不適切です。
[アミトリプチリン]は三環系抗うつ薬で、前立腺肥大症を持つ患者には通常推奨されません。これは、アミトリプチリンが排尿障害を悪化させる可能性があるためです。
[マプロチリン]も同様に三環系抗うつ薬で、排尿障害を持つ患者には適していません。
[ミルナシプラン]はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)で、特定の患者群においては有効かもしれませんが、前立腺肥大症を持つ患者における安全性については十分なデータがありません。
[クロミプラミン]は強力なセロトニン再取り込み阻害作用を持つ三環系抗うつ薬で、排尿障害を持つ患者には推奨されません。

◆ 問251

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


正解の選択肢は以下の通りです。
[ムスカリンM3受容体が遮断されるため。]
ムスカリンM3受容体は排尿に関与する重要な受容体で、膀胱の収縮を促進します。この受容体が遮断されると、膀胱の収縮が抑制され、排尿困難が引き起こされる可能性があります。前立腺肥大症を持つ患者にとっては、これは症状を悪化させることになります。

[アドレナリンα1受容体が刺激されるため。]
アドレナリンα1受容体は、血管の収縮や平滑筋の収縮に関与しています。この受容体が刺激されると、前立腺や尿道の平滑筋が収縮し、排尿障害が悪化する可能性があります。


他の選択肢が不正解である理由は以下の通りです。
[ドパミンD2受容体が遮断されるため。]
ドパミンD2受容体の遮断は、主に精神病治療に関連していますが、排尿障害には直接的な影響はありません。

[セロトニン5-HT3受容体が遮断されるため。]
セロトニン5-HT3受容体の遮断は、吐き気や嘔吐の治療に用いられることがありますが、排尿障害には関係がありません。

[アンドロゲン受容体が刺激されるため。]
アンドロゲン受容体の刺激は、前立腺肥大の治療においては逆効果ですが、この場合の薬物はアンドロゲン受容体には作用しません。