第109回薬剤師国家試験

◆問260-261

 58歳男性。身長165cm、体重85kg。2年前より2型糖尿病と診断され、以下の内服治療を行ってきた。
109回問260-261画像1
 今回患者がかかりつけ薬局に処方箋を持参した際、薬局薬剤師は、処方1~処方3が処方2~処方4に変更されていることを確認した。
109回問260-261画像2
 薬局薬剤師が患者に確認したところ、患者からは「医師から血糖コントロールが不十分と言われた。低血糖の症状はない。ただどうしても食事の量を減らすことができない。体重がまた少し増えた。」との情報が得られた。

◆ 問260


◆ 問261

処方1~4のいずれかの薬物の作用機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • α-グルコシダーゼを阻害して、小腸からのグルコース吸収を抑制する。
  • 尿細管からのグルコース再吸収を抑制して、グルコース排泄を増加させる。
  • AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を阻害して、肝臓での糖新生を抑制する。
  • グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体を刺激して、グルコースによるインスリン分泌を促進する。
  • アルドース還元酵素を阻害して、神経細胞内のソルビトール蓄積を抑制する。

◆ 問260

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


正解の選択肢についての解説は以下の通りです。
[処方1のお薬から処方4のお薬に変更しても、低血糖には十分に注意してください。]
シタグリプチン(処方1)からセマグルチド(処方4)への変更は、低血糖のリスクを減らす可能性がありますが、低血糖が起こる可能性はゼロではありません。セマグルチドは血糖を下げる効果があるため、低血糖には引き続き注意が必要です。

[処方4のお薬は週1回同じ曜日に注射してください。]
セマグルチドは週に1回の投与で十分な効果が得られる薬剤です。患者さんが毎週同じ曜日に注射することで、薬剤の効果を一定に保ち、忘れずに投与することができます。


誤りの選択肢についての解説は以下の通りです。
[処方4のお薬は処方1のお薬を週1回にした注射薬です。]
誤りです。処方4のセマグルチドは、シタグリプチンとは異なる種類の薬剤で、GLP-1受容体アゴニストに分類されます。シタグリプチンはDPP-4阻害剤であり、これらは異なる作用機序を持っています。

[処方4のお薬は処方2のお薬と同じように、利尿作用があるので脱水に注意してください。]
誤りです。セマグルチドには利尿作用はありません。ダパグリフロジン(処方2)はSGLT2阻害剤であり、利尿作用がありますが、セマグルチドは異なる薬剤クラスに属しています。

[処方4のお薬は注射の前後で血糖自己測定を忘れずに行ってください。]
誤りです。セマグルチドは血糖を下げる効果がありますが、注射の前後で必ずしも血糖自己測定を行う必要はありません。ただし、医師の指示に従って、定期的な血糖測定を行うことは重要です。

◆ 問261

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


正解の選択肢についての解説は以下の通りです。
[尿細管からのグルコース再吸収を抑制して、グルコース排泄を増加させる。]
ダパグリフロジン(処方2)はSGLT2阻害剤で、尿細管からのグルコースの再吸収を抑制し、尿中へのグルコースの排泄を増加させることで血糖を下げる効果があります。

[グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体を刺激して、グルコースによるインスリン分泌を促進する。]
セマグルチド(処方4)はGLP-1受容体アゴニストで、GLP-1受容体を刺激してインスリンの分泌を促進し、血糖を下げる効果があります。


誤りの選択肢についての解説は以下の通りです。
[α-グルコシダーゼを阻害して、小腸からのグルコース吸収を抑制する。]
α-グルコシダーゼ阻害剤は小腸での炭水化物の分解を遅らせ、グルコースの吸収を抑制しますが、処方1~4のいずれの薬剤もこの作用機序を持っていません。

[AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を阻害して、肝臓での糖新生を抑制する。]
メトホルミン(処方3)はAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、肝臓での糖新生を抑制します。AMPKを阻害するのではなく、活性化するのが正しいです。

[アルドース還元酵素を阻害して、神経細胞内のソルビトール蓄積を抑制する。]
アルドース還元酵素阻害剤は糖尿病性神経障害の治療に用いられることがありますが、処方1~4の薬剤にはこの作用機序を持つものは含まれていません。