第109回薬剤師国家試験

◆問288-289

42歳女性。半年前に両側手指関節及び両側膝関節の痛みを自覚し病院を受診した。検査の結果、関節リウマチと診断され、処方1による治療を受けていた。症状のコントロールが不十分だったためメトトレキサートが漸増されたが、多発性関節炎は持続した。最近では仕事にも支障をきたすようになったため、治療方針が変更されることになった。この患者は小児期に水痘に罹患した既往がある。
109回問288-289画像1

◆ 問288


◆ 問289

 治療方針が変更されて2週間後、患者が来院し、診察前の薬剤師との面談で「左腰部から背部に沿ってかゆみがあって、昨日から痛み出した」と訴えた。薬剤師は、患者情報を収集して副作用を疑い、医師へ情報提供を行った。医師は診察後バラシクロビルを処方した。
 薬剤師が副作用を疑うきっかけになった患者情報はどれか。2つ選べ。
  • メトトレキサートの服用状況
  • 追加した治療薬の処方内容
  • 年齢と性別
  • 水痘ワクチンの接種歴
  • 肝機能、腎機能

◆ 問288

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


この患者の症例に基づいて、正しい治療薬の選択肢は[トファシチニブ]と[アダリムマブ]です。以下にその理由を説明します。
[トファシチニブ]
これはJAK阻害剤であり、中等度から重度の活動性関節リウマチに対して、メトトレキサートに反応しない患者に推奨されます。この患者はメトトレキサートによる治療が不十分であったため、トファシチニブが適切な選択となります。

[アダリムマブ]
TNF阻害剤であり、関節リウマチの治療に有効です。メトトレキサート単独療法に反応が不十分な場合に追加することで症状の改善が期待できます。

他の選択肢の解説は以下の通りです。
[エリスロマイシン]
抗生物質であり、関節リウマチの治療には使用されません。

[免疫グロブリン製剤]
主に免疫不全症や特定の感染症に使用され、関節リウマチの標準治療には含まれません。

[コルヒチン]
痛風の治療に用いられる薬であり、関節リウマチには適していません。

◆ 問289

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、2


患者が訴えた症状に基づいて、薬剤師が副作用を疑うきっかけになった患者情報は以下の通りです。
[メトトレキサートの服用状況]
メトトレキサートは免疫抑制剤であり、副作用として皮膚の問題や感染症のリスクを高める可能性があります。患者が左腰部から背部にかけてのかゆみと痛みを訴えたことは、この薬剤による副作用の可能性を示唆しています。

[追加した治療薬の処方内容]
治療方針が変更され、新たに追加された治療薬(トファシチニブやアダリムマブなど)も副作用を引き起こす可能性があります。これらの薬剤は免疫系に影響を与え、感染症のリスクを高めることが知られています。

他の選択肢の解説は以下の通りです。
[年齢と性別]
これらは副作用を直接的に引き起こす要因ではありません。

[水痘ワクチンの接種歴]
患者は小児期に水痘に罹患しており、水痘ワクチンの接種歴は副作用とは関連がありません。

[肝機能、腎機能]
肝機能と腎機能の検査値は正常範囲内であり、これらが副作用を疑う直接的な理由にはなりません。