第109回薬剤師国家試験

◆問290-291

79歳女性。3年前、階段を昇る時に息切れを感じるようになり受診したところ、胸部レントゲン写真で心拡大と肺うっ血を認め、心エコー検査等の結果、慢性心不全と診断された。処方1と処方2で治療されていたが、慢性心不全の増悪により入院した。その後、処方1を処方3へ変更し目立った副作用なく病態が安定した。医師は検査値等を確認し、さらに処方4を退院時に追加し退院することになった。退院時の検査値等は以下のとおりである。
109回問290-291画像1

◆ 問290

この患者の病態と治療に関する記述として、 正しいのはどれか。2つ選べ。
  • 心臓の拡張不全が主体で、収縮不全はみられない。
  • 息切れと肺うっ血は、左心不全に起因する症状である。
  • 患者の呼吸症状が改善したので、ビソプロロールを減量すべきである。
  • ダパグリフロジンは、高血糖の改善を目的に追加処方されている。
  • 血清カリウム値を定期的に測定する。

◆ 問291


◆ 問290

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


正解は[息切れと肺うっ血は左心不全に起因する症状である。]と[血清カリウム値を定期的に測定する。]です。
[息切れと肺うっ血は左心不全に起因する症状である。]
息切れと肺うっ血は、左心不全によく見られる症状です。左心室の機能不全が肺循環に負担をかけ、肺うっ血を引き起こすためです。

[血清カリウム値を定期的に測定する。]
患者はエプレレノン(アルドステロン拮抗薬)とサクビトリルバルサルタン(ARB/ネプリライシン阻害薬の組み合わせ)を服用しており、これらの薬剤は血清カリウム値を上昇させる可能性があるため、定期的な測定が必要です。

他の選択肢については以下の通りです。
[心臓の拡張不全が主体で、収縮不全はみられない。]
左室駆出率 (LVEF) が35%であることから、患者は収縮不全も併せ持っています。したがって、拡張不全のみが主体ではありません。

[患者の呼吸症状が改善したので、ビソプロロールを減量すべきである。]
ビソプロロールは心不全治療において重要な役割を果たす薬剤であり、呼吸症状が改善したからといって減量する必要はありません。

[ダパグリフロジンは、高血糖の改善を目的に追加処方されている。]
ダパグリフロジンはSGLT2阻害薬であり、高血糖の改善だけでなく、心不全の治療にも有効であることが示されています。空腹時血糖とHbA1cの値が正常範囲内であるため、高血糖の改善が主目的ではないことがわかります。

◆ 問291

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、2


追加された処方4、ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物錠10mgを服用する際に、患者が特に注意すべき副作用症状は[ふらつき]と[陰部痒痒感]です。以下にその理由を説明します。

[ふらつき]ダパグリフロジンは血糖を下げる作用があり、低血糖を引き起こす可能性があるため、ふらつきやめまいを感じることがあります。
[陰部痒痒感]この薬剤は尿中に糖を排出させることで作用するため、尿路感染症や性器周囲の感染症のリスクが高まり、陰部のかゆみや刺激感を引き起こすことがあります。

他の選択肢については以下の通りです。
[歯肉肥厚]歯肉肥厚は一般的に抗てんかん薬や免疫抑制剤など他の薬剤によって引き起こされる副作用であり、ダパグリフロジンとは関連がありません。
[喀痰]喀痰の増加はダパグリフロジンの一般的な副作用ではありません。
[難聴]ダパグリフロジンによる難聴の報告は一般的ではありません。