第109回薬剤師国家試験
◆問294-295
67歳女性。身長155cm、体重43kg。2年前より心窩部痛を自覚し、外来を受診。CT検査などで膵臓がん、肝転移(StageⅣ)と診断された。一次治療として、フルオロウラシル+イリノテカン塩酸塩+オキサリプラチン+レボホリナート(FOLFIRINOX)療法を導入した。1クール目Day8に発熱があり再来院した。処方1を服用中であり、全身倦怠感が強く入院加療となった。担当医から追加処方(処方2)の連絡を受けて、カンファレンスで今後の方針について協議することになった。
◆ 問294
薬剤師が行う内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。-
腋窩温や検査値から発熱性好中球減少症を疑った。
-
フィルグラスチムの投与を提案した。
-
酸化マグネシウムによるレボフロキサシンの吸収増加について情報提供した。
-
レボフロキサシンの用量を250mgに減量することを提案した。
-
肝障害があるので、アセトアミノフェンの中止を提案した。
◆ 問295
◆ 問294
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解：1、2
正解の選択肢について解説します。
[腋窩温や検査値から発熱性好中球減少症を疑った。]
正解です。患者さんは発熱と共に、Day 8の検査値で好中球が大幅に減少しています（300/μL）。これは発熱性好中球減少症の典型的な症状であり、化学療法による副作用の一つとして知られています。したがって、この疑いは妥当です。
[フィルグラスチムの投与を提案した。]
正解です。フィルグラスチムは好中球の数を増やすために使用される薬剤で、発熱性好中球減少症の治療に有効です。患者さんの好中球数が非常に低いため、この治療の提案は適切です。
誤りの選択肢について解説します。
[酸化マグネシウムによるレボフロキサシンの吸収増加について情報提供した。]
誤りです。実際には、酸化マグネシウムはレボフロキサシンの吸収を減少させる可能性があります。
[レボフロキサシンの用量を250mgに減量することを提案した。]
誤りです。患者さんのeGFRは70 mL/min/1.73 m2であり、レボフロキサシンの用量を減量するほどの腎機能障害は示されていません。
[肝障害があるので、アセトアミノフェンの中止を提案した。]
誤りです。患者さんのAST/ALTの値はわずかに上昇していますが、これは肝障害を示すほどのものではありません。アセトアミノフェンは適切に使用されれば安全であり、中止する必要はありません。
◆ 問295
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解：2、3
正解の選択肢について、解説します。
[CRPが上昇している可能性が高い。]
患者さんは発熱と好中球の数が著しく減少しています。これらは感染の兆候であり、CRP（C反応性タンパク）の上昇は感染の指標となるため、CRPが上昇している可能性が高いと考えられます。
[口内炎や咽頭痛を発症しやすい。]
好中球の数が減少すると、感染防御能力が低下し、口内炎や咽頭痛などの感染症を発症しやすくなります。患者さんの好中球数は300/μLと非常に低いため、この症状が発生するリスクが高いです。
誤りの選択肢について、解説します。
[末梢における好中球の破壊が亢進している。]
好中球の数が減少しているのは、末梢での破壊が亢進しているからではなく、化学療法による骨髄抑制の結果です。
[高度な貧血が認められる。]
患者さんのヘモグロビン値は11.9 g/dLであり、高度な貧血とは言えません。一般的に、女性の場合、ヘモグロビン値が12 g/dL未満で貧血と診断されますが、この値は軽度の貧血に分類されます。
[薬剤に対するアレルギーにより発症したと考えられる。]
患者さんの症状は化学療法による副作用としての好中球減少が原因であり、薬剤アレルギーによるものではありません。また、患者さんのAST/ALTの値はわずかに上昇していますが、これは薬剤アレルギーを示唆するものではありません。
