第109回薬剤師国家試験

◆問296-297

 50歳男性。喫煙20本/日、飲酒ビール500mL/日。5年くらい前から会社の健康診断にて高血糖を指摘されており、近医を受診して2型糖尿病と診断された。その後、食事療法と運動療法を行うも改善が認められず、以下の薬剤を服薬することになった。
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 服用3ヶ月後の定期受診時に病院薬剤師は、診療録より近日冠動脈造影検査を予定していること、しばしば軽度の低血糖症状を自覚したこと、朝食を食べないことも多く、よく飲み忘れるとの情報を得た。身体並びに検査結果は以下のとおりである。
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◆ 問296


◆ 問297

本症例の糖尿病治療強化のために追加できる薬剤及び用法として適切なのはどれか。2つ選べ。
  • エンパグリフロジン錠を朝食後に投与する。
  • レパグリニド錠を朝食後に投与する。
  • グリメピリド錠を就寝前に投与する。
  • ボグリボース錠を夕食後に投与する。
  • セマグルチド錠を空腹時に投与する。

◆ 問296

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、4


正解の選択肢について、解説します。
[下痢・嘔吐などの症状が出ていないかを確認し、服用中に出た場合、服用を一旦中止し、医師に相談することを説明した。]
メトホルミンは胃腸障害を引き起こす可能性があり、下痢や嘔吐などの症状が出た場合、乳酸アシドーシスのリスクが高まるため、服用を一時中止し医師に相談する必要があります。

[自動車の運転時に低血糖の症状を感じた場合、速やかに安全に停車し、糖分補給する必要があることを説明した。]
低血糖は運転中に危険な状況を引き起こす可能性があるため、低血糖の症状を感じた場合は、速やかに安全に停車し、糖分を補給する必要があります。


誤りの選択肢について、解説します。
[アルコールの摂取は一切しないように再度指導した。]
アルコールの摂取を完全に禁止する必要はありませんが、適量に制限する指導が必要です。

[冠動脈造影検査前後も処方薬の服用を継続するよう説明した。]
冠動脈造影検査を受ける患者には、メトホルミンの服用を一時中止することが推奨される場合があります。腎機能に影響があるため、検査前後の服用については医師の指示に従うべきです。

[飲み忘れていた頻度を確認し、食後でないと副作用のリスクがあがるため食後服用を説明した。]
メトホルミンは食後に服用することが推奨されますが、飲み忘れた場合の対処法としては、次の食事まで待つか、忘れたことに気づいた時点で服用することが一般的です。食後でないと副作用のリスクが上がるわけではありません。

◆ 問297

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、5


正解の選択肢について、以下の理由で適切です。
[エンパグリフロジン錠を朝食後に投与する。]
正解です。エンパグリフロジンはSGLT2阻害薬であり、尿糖を増やして血糖を下げる作用があります。この患者さんは尿糖が陽性であり、eGFRも55mL/min/1.73m²と腎機能が保たれているため、朝食後にエンパグリフロジンを追加することは血糖コントロールを改善する適切な選択です。

[セマグルチド錠を空腹時に投与する。]
正解です。セマグルチドはGLP-1受容体作動薬であり、インスリンの分泌を促進し、血糖を下げる効果があります。空腹時に投与することで、食後の血糖上昇を抑えることができます。


誤りの選択肢については以下の理由で不適切です。
[レパグリニド錠を朝食後に投与する。]
不適切です。レパグリニドは食後高血糖を抑えるために食前に服用する必要がある薬剤です。朝食後に投与すると効果が十分でない可能性があります。

[グリメピリド錠を就寝前に投与する。]
不適切です。グリメピリドは長時間作用型のスルホニル尿素薬であり、低血糖のリスクがあります。この患者さんはすでに低血糖症状を自覚しているため、就寝前の投与は避けるべきです。

[ボグリボース錠を夕食後に投与する。]
不適切です。ボグリボースは食事の炭水化物の吸収を遅らせる薬剤であり、食前に服用する必要があります。夕食後に投与すると効果が十分でない可能性があります。また、この患者さんはすでにメトホルミンを服用しており、ボグリボースの追加は必ずしも最適ではありません。