第110回薬剤師国家試験

◆ 問87

周術期の患者において血栓症のリスクが最も高い薬剤はどれか。1つ選べ。
  • メトホルミン塩酸塩錠
  • サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物錠
  • ダパグリフロジンプロピレングリコール錠
  • ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠
  • セマグルチド錠

◆ 問87

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:4


周術期(手術前後)の患者では、手術やその後の安静状態により血栓症(特に静脈血栓塞栓症:VTE)のリスクが高まります。特に、エストロゲン製剤は、血液凝固能を亢進させる作用があるため、血栓症のリスクを高めることが知られています。

それぞれの選択肢を解説します。
誤:[メトホルミン塩酸塩錠]
メトホルミンは、糖尿病治療薬であり、インスリン感受性を改善する作用を持ちます。この薬剤は血栓症のリスクを直接的に増加させることはありません。そのため、周術期における血栓症リスクが高い薬剤とは言えません。

誤:[サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物錠]
サクビトリルバルサルタンは、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)で心不全治療薬であり、血圧を下げる効果があります。この薬剤も血栓症リスクを直接的に増加させる作用はありません。したがって、血栓症リスクが高い薬剤には該当しません。

誤:[ダパグリフロジンプロピレングリコール錠]
ダパグリフロジンは、SGLT2阻害薬であり、糖尿病治療に使用されます。この薬剤は利尿作用を持ち、体液量の減少を引き起こす可能性がありますが、血栓症リスクを直接的に増加させることはありません。

正:[ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠]
ドロスピレノン・エチニルエストラジオールは、経口避妊薬として使用される薬剤であり、エストロゲンとプロゲスチンの合剤です。この薬剤は、血液凝固因子の活性を高める作用があり、血栓症リスクを増加させることが知られています。特に、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高まるため、周術期の患者において注意が必要です。

誤:[セマグルチド錠]
セマグルチドは、GLP-1受容体作動薬であり、インスリン分泌を促進し、食欲を抑制する作用があります。糖尿病治療に使用されます。この薬剤は体重減少や血糖コントロールに効果がありますが、血栓症リスクを直接的に増加させることはありません。


したがって、周術期の患者において血栓症リスクが最も高い薬剤は、[ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠]です。