第97回薬剤師国家試験

◆問288-289

75歳男性。数年前の健康診断でPSAがやや高値(5.1 ng/mL)であったが、自覚症状もないため、放置していた。最近になり、腹圧をかけないと尿が出なくなり、血尿が出現したため、泌尿器科を受診した。また、腰痛も自覚するようになった。
【検査所見】
直腸診により、前立腺は栗の実大であり、左右は非対称、また、一部に硬結が触知された。
腫瘍マーカー検査:PSA 40 ng/mL
前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)12 ng/mL
(正常値3 ng/mL以下)
MRI検査:所属リンパ節の腫大が認められた。
骨シンチグラフィー検査:骨盤及び腰椎に硬化性病変が認められた。

◆ 問288

本症例に関する記述のうち、適切でないのはどれか。2つ選べ。
  • 本症例は男性ホルモン依存性の疾患である。
  • 本疾患は前立腺外腺の腫瘍化が主な原因である。
  • PSAの高値は確定診断として用いられない。
  • 放射線療法は適応とならない。
  • 前立腺全摘除手術を行った後に薬物療法を行う。

◆ 問289


◆ 問288

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:4、5


PSA及び前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)が高く、直腸診により硬結が触知されていることから、本患者は前立腺癌であると考えられる。また、骨シンチグラフィー検査により骨盤及び腰椎に硬化性病変が認められていることから前立腺癌が骨転移を起こしていると考えられる。


前立腺癌では、前立腺外腺の腫瘍化が主な原因であり、アンドロゲン(男性ホルモン)が関与している。


PSAの高値は、前立腺肥大症でも示すことがあるため、本症の確定診断として用いることはできない。なお、前立腺癌の確定診断には前立腺針生検が用いられる。


前立腺癌の早期〜中期には、放射線療法を適用することがある。また、前立腺癌の進行期に認められる疼痛を緩和する目的で放射線療法を適用することがある。


前立腺全摘除手術は、早期〜中期に対して行うが、本症例のような進行期癌に対しては行わない。なお、進行期癌に対しては、手術より薬物療法が優先される。

◆ 問289

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:4


フルタミド服用中に発熱、乾性咳嗽、全身倦怠感、呼吸困難の増悪などが現れた場合には、フルタミドの副作用である間質性肺炎を起こしている可能性があるため、服薬を中止し直ちに受診するように指導する。


フルタミドの用法(1日3回 朝昼夕食後)には、休薬期間は設定されていない。


フルタミドは、アンドロゲン受容体を遮断し、男性ホルモンの作用を弱める薬である。なお、設問の記述は、LH−RH誘導体製剤(リュープロレリンなど)、Gn−RH受容体アンタゴニスト(デガレリクス)の記述である。


フルタミド服用により、劇症肝炎等の重篤な肝障害を起こすことがあるため、定期的(少なくとも1ヶ月に1回)に肝機能検査を行う。