第98回薬剤師国家試験

◆ 問114

図は、アロステリック酵素として知られるある酵素について、基質Aの濃度と反応初速度の関係を示したものである。曲線1及び3は、酵素反応系に、それぞれ酵素に結合する物質X及びYを加え、また曲線2は何も加えずに測定した結果である。なお、X及びYは基質Aと構造上の類似性が低い。この結果に関する考察のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
98回問114画像1
  • X及びYのいずれも存在しないとき、基質Aの濃度を高めていくと、ある濃度以上になると反応速度が急に増加する。
  • 基質Aの濃度が十分に高いときには、X、Yの存在あるいは非存在にかかわらず、反応速度はほぼ等しい。
  • Xの存在下では、酵素の基質Aに対する見かけの親和性が低下する。
  • 基質Aの濃度が低いときには、Yによって酵素活性が阻害される。
  • X及びYが結合する酵素の部位は、基質Aが結合する部位とは異なると考えられる。

◆ 問114

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3


アロステリック酵素とは、酵素の活性中心以外に酵素活性を変化させる因子(アロステリックエフェクター)との結合部位を有しており、アロステリックエフェクターが結合することにより、酵素の立体構造が変化し、酵素活性が変化する酵素のことである。
アロステリックエフェクターには、酵素活性を上昇させる正のアロステリックエフェクターと酵素活性を低下させる負のアロステリックエフェクターが存在する。


グラフより、物質Xも物質Yも存在しない(曲線2)において、基質Aの濃度が上昇すると、ある濃度以上になると反応初速度が急に上昇している。


基質Aの濃度が十分大きいとき(グラフの右側)、グラフ1〜3の反応初速度はほとんど同じ値を示している。


物質X存在下(曲線1)では、物質Xも物質Yも存在しない(曲線2)に比べ反応初速度が大きいため、物質Xの存在により、酵素と基質Aとの見かけの親和性が増大していると考えられる。


物質Y存在下(曲線3)では、物質Xも物質Yも存在しない(曲線2)に比べ反応初速度が小さいため、物質Yによって酵素活性が阻害されていると考えられる。


物質Xと物質Yはアロステリックエフェクターであり、基質Aの結合部位と異なる部位に結合する。