第99回薬剤師国家試験

◆問196-197

 病棟の看護師から、点滴静注しているラインの側管からジアゼパム注射液を注入したところ、ラインに残存する他の注射液と混ざり、白濁してしまったとの問い合わせが薬剤部にあった。

◆ 問196


◆ 問197

 25℃におけるジアゼパム水溶液(20 µg/mL)の注射筒基材への吸着はpH依存性を示す。pH3.2におけるジアゼパム注射筒基材への吸着が2.3 µg/mgであった。pH7.0における吸着に最も近い値(µg/mg)はどれか。1つ選べ。ただし、ジアゼパムのpKa=3.5、吸着によるジアゼパムの濃度変化は無視できるものとし、吸着は分子形薬物濃度に比例するものとする。また、log2=0.30、log3=0.48とする。
  • 0.1
  • 2.0
  • 3.5
  • 5.5
  • 7.0

◆ 問196

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2


 ジアゼパムは脂溶性が高いため、非水性溶媒(プロピレングリコールやエタノールなど)を用いて注射液としている。そのため、他の注射液との混合により非水性溶媒が希釈されると、ジアゼパムの溶解性が低下し、沈殿を生成することにより注射液が白濁する。

◆ 問197

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:5


ジアゼパムの注射筒基材による吸着は、分子形薬物濃度に比例する。このことから、吸着量を計算するためには、分子形薬物濃度を計算する必要がある。
ジアゼパムは弱塩基性薬物であり、あるpHにおける分子形薬物濃度、イオン形薬物濃度を以下の式を用いて計算することが可能である。
99回問196-197画像1
pH3.2における分子形薬物濃度は以下のように求めることができる。
99回問196-197画像2
[分子形]:[イオン形]=1:2
ジアゼパム水溶液の濃度が20 µg/mLであることから、
[分子形]=20×1/3=6.67 µg/mL

pH7.0における分子形薬物濃度は以下のように求めることができる。
99回問196-197画像3
[分子形]:[イオン形]=103.5:1 (ほとんど分子形として存在する。)
ジアゼパム水溶液の濃度が20 µg/mLであり、ほとんど分子形として存在することから、
[分子形]=20 µg/mL

pH3.2から7.0まで上昇させると、分子形薬物濃度が約3倍に増加する。吸着は分子形薬物濃度に比例するため、注射筒基材への吸着量は2.3 µg/mLの約3倍、約7.0 µg/mLとなる。