第99回薬剤師国家試験

◆問302-303

48歳女性。身長160 cm、体重65 kg。営業職。1年ほど前から胸焼けやゲップなどがあり市販の胃腸薬で対応していた。最近、その症状が改善されず、また、突然、咳込んだりすることがあったため、消化器内科を受診したところ、逆流性食道炎と診断され、以下の処方が開始された。
99回問302-303画像1

◆ 問302


◆ 問303

オメプラゾール錠を4週間服用した結果、胸焼けなどの症状は明らかに改善したが、以前からの咳は継続していた。そこで、文献検索により、逆流症状を有する患者の慢性の咳に対するプロトンポンプ阻害薬の効果に関する論文を入手した。その論文の中に以下の図が掲載されていた。この図に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
99回問302-303画像2
  • メタアナリシスの結果を示す際によく用いられ、ファンネルプロットと呼ばれる。
  • 検討に用いられた3つの研究結果が不均一とはいえないことが確認できる。
  • 横の線は、標準誤差を表す。
  • 最下段のひし形は、3つの研究結果を統合したものである。
  • 逆流症状を有する患者の慢性の咳に対して、プロトンポンプ阻害薬は、プラセボよりも有意に効果があると、読み取れる。

◆ 問302

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:4、5


オメプラゾールの主たる代謝酵素はCYP2C19である。オメプラゾールとワルファリンを併用すると、ワルファリンの作用が増強することがあるため、両剤は併用注意の組合せである。


オメプラゾールの主たる代謝酵素であるCYP2C19の(PM:poor metabolizer)は、日本人を含むモンゴル系人種で13〜20%存在する。


CYP2C19の(EM:extensive metabolizer)の患者では、PM患者より、オメプラゾールが早く代謝されるため、症状の改善がみられにくい。


オメプラゾール錠は腸溶性錠であるため、噛んだり砕いたりせずに服用する。


オメプラゾールの投与により、胃がんの症状(胃部不快感、吐き気、胸やけなど)が抑えられ、隠蔽されることがある。そのため、オメプラゾールを投与する際には、内視鏡などで悪性でないことを確認する必要がある。

◆ 問303

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


問題に添付されている図は、フォレストプロットである。フォレストプロットには、メタアナリシスの結果が示されており、上段には個々の研究結果、最下段にはこれらを統合した結果を示している。フォレストプロットの読み取り方を以下に示す。
<フォレストプロットの読み取り方>
・95%信頼区間(横線及び◆の横幅)がオッズ比1を挟んでいる場合
結果に有意差がない
・95%信頼区間(横線及び◆の横幅)がオッズ比1を挟んでいない場合
結果に有意差がある
・四角(■):個々の研究結果の平均値
・横線(―):個々の研究結果の95%信頼区間
・菱形(◆)の中心:統合した結果の代表値
・菱形(◆)の横幅:統合した結果の95%信頼区間


図の左下にあるTest for heterogenenityにP=0.88(P>0.05なら不均一ではない)とあることから、この研究結果は、不均一とはいえない。


問題文に添付されている図より、各研究結果の95%信頼区間が1を挟んでおり、また、総合結果の95%信頼区間も1を挟んでいるため、逆流症状を有する患者の慢性の咳に対して、プロトンポンプ阻害薬は、プラセボよりも有意に効果があると、読み取ることはできない。