第102回薬剤師国家試験
◆ 問182
22歳男性。1ヶ月ほど前から体に違和感があり、「就職したばかりで慣れないので緊張しているのかな?」と思っていた。「少し前にショックな出来事があり、その事を引きずっているのかな?」とも思っていた。数日前、「背後で上司が自分の事を非難する声」が聞こえてきた。その声は毎日のように続き、そのことを考えると不眠となった。受診の結果、統合失調症と診断され、薬物治療が開始されることとなった。この症例に関し、正しいのはどれか。2つ選べ。
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統合失調症の発症は、思春期から青年期ではまれである。
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急性期の治療には非定型抗精神病薬の多剤併用療法が推奨される。
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定型抗精神病薬による治療を開始した際の注意すべき副作用に悪性症候群がある。
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多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)による治療では、体重増加に注意する必要がある。
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錐体外路症状の発症予防のため、レボドパの併用が推奨される。
◆ 問182
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:3、4
1 誤
本疾患は、主として思春期〜青年期の10歳代〜30歳代で発症する。
2 誤
本疾患の急性期には、激しい陽性症状(幻覚、妄想など)が認められることがあるため、その症状を治療するために定型抗精神病薬(ハロペリドール等)による薬物療法が推奨される。
3 正
定型抗精神病薬は、ドパミンD2受容体遮断作用を有するため、副作用として悪性症候群(症状:高熱、意識障害、呼吸困難、循環虚脱など)を起こすことがある。
4 正
抗精神病薬は、副作用として体重増加をきたすことがある。体重増加の副作用については、特に多元受容体作用抗精神病薬(MARTA:オランザピン、クエチアピン)で生じやすい。
5 誤
抗精神病薬は、ドパミンD2受容体遮断作用を有するため、副作用として錐体外路症状を起こすことがある。それらの症状が認められた場合には、レボドパを併用せず、原因薬物の減量や錐体外路症状を起こしにくい他の薬物に変更することを検討する。