第102回薬剤師国家試験
◆問316-317
漬物製造工場の野菜洗浄室で清掃中、作業員が誤って塩酸タンクを倒し、隣接した次亜塩素酸ナトリウム溶液タンクのバルブを破損した。その際、漏出した塩酸と次亜塩素酸ナトリウムが反応してガスが発生し、吸引した作業者は、激しい目の痛みと呼吸困難を訴えた。その直後、作業員は近隣の総合病院に救急搬送された。◆ 問316
救急搬送された患者に対し、病院で行う処置として適切でないのはどれか。2つ選べ。-
水で目及び粘膜を洗浄する。
-
EDTA(エデト酸カルシウム二ナトリウム)を投与する。
-
酸素吸入する。
-
輸液を投与する。
-
チオ硫酸ナトリウムを投与する。
◆ 問317
◆ 問316
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:2、5
本症例では、塩酸と次亜塩素酸ナトリウム溶液が反応し、塩素ガスが発生している。塩素ガスにばく露した場合、眼、鼻、咽頭の痛み、呼吸困難、ぜん鳴、上気道閉塞を起こすことがある。それらの症状を改善するため、塩素ガスにばく露した場合には以下の処置を行う。
・目の塩素を洗い流すために大量の水で目及び粘膜を洗浄する。
・呼吸不全が認められる場合は、気道確保、酸素吸入、人工呼吸を行う。
・循環不全を改善する目的で輸液を投与する。
なお、重金属による中毒に対しては、EDTA(エデト酸カルシウム二ナトリウム)を投与し、シアン及びシアン化合物中毒に対しては、チオ硫酸ナトリウムを投与する。
◆ 問317
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、2、3、4、5
1 正
薬局において、劇物(塩酸など)を販売する場合には、都道府県知事(保健所設置市市長または特別区区長)より毒物劇物販売業の登録を受けなければならない。
2 誤
引火性、発火性、爆発性を有する毒物または劇物(ピクリン酸、ナトリウムなど)を毒物劇物営業者以外の者に対して販売・授与する場合には、氏名及び住所を運転免許証等で確認する必要があるが、塩酸を販売する場合には、氏名及び住所を運転免許証等で確認する必要はない。
3 誤
毒物劇物購入者は、購入した劇物の名称と数量を帳簿に記載する必要はない。
4 正
業務上毒物または劇物を取り扱う者は、劇物を貯蔵する場所に「医薬用外」及び「劇物」の文字を表示する必要がある。
5 正
劇物である塩酸を廃棄する場合は、希釈・中和等の政令で定める技術上の基準に従って、水で10倍に希釈して、測定したときのpHを2以上(劇物に該当しないもの)にしなければならない。