第103回薬剤師国家試験

◆ 問115

あるDNAの塩基配列をジデオキシ法により解析し、図のような実験結果を得た。また、表(制限酵素一覧)を参照して、その配列中の制限酵素部位の同定を行なった。

【ジデオキシ法の原理】
DNAポリメラーゼによる相補鎖DNA合成の際に、その基質である4種類のデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP:NはA、G、C又はT)に加え、4種類のジデオキシリボヌクレオチド三リン酸(ddNTP:NはA、G、C又はT)のうち、それぞれ1種類だけを用いて特異的に終わる様々な長さのDNA断片が合成され、これら断片をポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離することで、DNAの塩基配列を解読できる。

【実験方法】
鋳型DNA鎖にプライマーDNA断片を結合させ、dATP、dGTP及びdTTPと放射性同位元素で標識したdCTPを加えた。この反応溶液にddATP、ddGTP、ddCTP又はddTTPを別々に加えて、標識相補鎖DNAを合成した。次にこれら4種類の反応溶液をポリアクリルアミドゲル電気泳動法に供じた。泳動後、乾燥したゲルをX線フィルムに密着させ、-80℃で一晩放置した。

【実験結果】
DNA断片は放射標識されていることから、X線フィルム上ではしご階段状の泳動像(オートラジオグラフィー)として検出された(図)。
103回問115画像1
X線フィルム上で解読したDNA配列及び実験方法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • DNA伸長反応を停止させるddNTPには、3'の位置にヒドロキシ(OH)基が存在しない。
  • 5'末端から5番目の塩基はチミン(T)である。
  • 3'末端から4番目の塩基はグアニン(G)である。
  • EcoRⅠにより認識・切断される配列が存在する。
  • KpnⅠにより認識・切断される配列が存在する。

◆ 問115

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


ジデオキシ法(サンガー法)は、DNAポリメラーゼによるDNA合成の伸長反応を特定の塩基の位置でランダムに停止させることで目的DNAの塩基配列を決定する方法である。
ジデオキシ法ではDNAの合成停止剤として、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸が用いられる。これは3’の位置にヒドロキシ(OH)基が存在しないため、次のヌクレオチドとホスホジエステル結合が形成できず、DNAの伸長反応が停止することを利用している。
103回問115画像1

1 正
前記参照

2 誤
DNA断片のオートラジオグラフィーより、目的DNAの5’ 末端から5番目の塩基はアデニン(A)である。

3 誤
DNA断片のオートラジオグラフィーより、目的DNAの3’ 末端から4番目の塩基はシトシン(C)である。

4 正
EcoRⅠがDNA鎖を特異的に切断する際に認識する配列は、5’−GAATTC−3’の回文配列(パリンドローム配列)である。オートラジオグラフィーで解読したDNA配列には、5’−GAATTC−3’の配列が存在しているため、EcoRⅠにより認識・切断されると考えられる。

5 誤
KpnⅠが、DNA鎖を特異的に切断する際に認識する配列は、5’−GGTACC−3’の回文配列(パリンドローム配列)である。オートラジオグラフィーで解読したDNA配列には、5’−GGTACC−3’の配列が存在しないため、KpnⅠにより認識・切断されないと考えられる。