第103回薬剤師国家試験

◆問220-221

48歳女性。既往歴 乳がん、StageⅠ。2年前の術後より再発予防の目的で以下のホルモン療法を受けている。
103回問220-221画像1

◆ 問220

タモキシフェンの代謝に関わるCYP2D6には、その酵素活性に変化をきたす遺伝子多型が多数知られている。図はその一部の多型と乳がん術後タモキシフェンの単剤治療症例における無再発生存率との関連性を示している。遺伝子多型に関する記述及び図の解釈として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
103回問220-221画像2
  • 遺伝子多型には、1つの塩基がその他の塩基に置き換わっているものがある。
  • 翻訳されるタンパク質のアミノ酸配列は、翻訳領域においてフレームシフト変異した遺伝子とその野生型遺伝子では異なる。
  • PCR法を利用することで、CYP2D6の遺伝子変異を検出することができる。
  • 変異型遺伝子をホモでもつ症例[CYP2D6(10/10)]では、野生型遺伝子をホモでもつ症例[CYP2D6(wt/wt)]と比べて、タモキシフェンの代謝が減弱していると考察される。
  • CYP2D6(10/10)の症例では、タモキシフェンによる抗腫瘍効果が増強していると考察される。

◆ 問221


◆ 問220

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:5


1 正しい
遺伝子多型には、1つの塩基がその他の塩基に置き換わっているもの(SNP:スニップ)がある。

2 正しい
フレームシフト突然変異とは、塩基の欠如または挿入によって遺伝情報が変化する変異のことである。フレームシフト突然変異では、異なったアミノ酸配列を有するタンパク質が合成されることがある。

3 正しい
PCR法とは、DNAポリメラーゼを用いたDNA増殖反応のことであり、標的とするDNA領域を少量の試料から短時間で増殖することが可能である。これを利用することでCYP2D6の遺伝子変異を短時間で検出することが可能である。

4 正しい
タモキシフェンは生体内でCYP2D6により、活性代謝物であるエンドキシフェンへと変換され効果を示す。設問の図より、変異型遺伝子をホモでもつ症例[CYP2D6(10/10)]での無再発生存率は、野生型遺伝子をホモでもつ症例[CYP2D6(wt/wt)]の無再発生存率と比べて治療期間とともに低下している。そのため、変異型遺伝子をホモでもつ症例[CYP2D6(10/10)]では、タモキシフェンの代謝活性化が低下し、抗腫瘍効果が減弱していると考えられる。

5 誤っている
解説4参照

◆ 問221

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3


パロキセチン塩酸塩水和物は、肝臓の薬物代謝酵素CYP2D6を阻害することによりタモキシフェンの代謝活性化を阻害することがある。よって、タモキシフェン服用中の患者にパロキセチン塩酸塩水和物を投与する際には注意が必要である。