第108回薬剤師国家試験

◆ 問326

36歳男性。身長172cm、体重61kg。アルコール性肝硬変による末期肝不全に対して、妻をドナーとして生体肝移植術が施行された。術後4週間で退院し、退院2週間後1回目の診察において、退院時処方は処方1に変更されるとともに処方2も追加された。退院6週間後3回目となる今回の診察において、タクロリムス及びエベロリムスの血中濃度が前回に比べて上昇していた。退院当日から今回までの検査値等の推移と患者からの今回の聞き取り内容を示す。
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以上の経過から、薬剤師のアセスメントとして誤っているのはどれか。1つ選べ。
  • 口内炎は、エベロリムスの副作用である。
  • スウィーティーを食べたことにより、エベロリムスの血中濃度が上昇した。
  • エベロリムスの併用によりタクロリムスの血中濃度が上昇した。
  • 足のむくみは、タクロリムスの副作用である。
  • ST 配合錠の継続はエベロリムスの血中濃度の上昇と無関係である。

◆ 問326

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3


エベロリムスはmTOR阻害薬で、さまざまな規格があります。0.25mg、0.5mg、0.75mgは移植時の拒絶反応を抑制するために使われ、2.5mgと5mgは抗がん剤として使用されます。また、2mgと3mgの分散錠は結膜性硬化症に用いられ、子供が飲みやすいように開発されています。

エベロリムスは、シクロスポリンやタクロリムスと併用され、これらの薬剤の投与量を減らしたり副作用を軽減する目的で使われます。ただし、エベロリムスを併用するとタクロリムスの血中濃度が上昇する場合、副作用の軽減効果は期待できません。したがって、「エベロリムスの併用によりタクロリムスの血中濃度が上昇した。」は誤りと考えられます。また、エベロリムスは主にCYP3A4で代謝されるため、「スウィーティーを食べたことにより、エベロリムスの血中濃度が上昇した。」が正しいと推測されます。