第109回薬剤師国家試験

◆問154-155

78歳女性。夫と2人暮らしであるが、半年前から物の置き忘れやしまい忘れをするようになった。3ヶ月前から誰もいない庭を指さして「子供たちが遊んでいる。」などと言うようになった。睡眠中に大声を出して、手足をばたつかせることがあるが、本人に自覚はない。心配した夫に連れられ病院を受診した。診察時、受け答えは良好であったが、歩行は小刻み様であった。日付や場所の見当識が一部曖昧であり、ミニメンタルステート検査は30点満点中23点であった。また、脳血流SPECTにより後頭葉の血流低下が認められた。

◆ 問154

この患者に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • 前頭葉に著明な萎縮が生じている。
  • パーキンソン症状が認められる。
  • 脳梗塞によって二次的に発症した可能性が高い。
  • 幻視やREM睡眠行動異常が認められる。
  • 症状は階段状に悪化する。

◆ 問155


◆ 問154

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


正解は[パーキンソン症状が認められる。]と[幻視やREM睡眠行動異常が認められる。]です。

正解についての解説は以下の通りです。
[パーキンソン症状が認められる。]
正解です。この患者さんは小刻みな歩行を示しており、これはパーキンソン症候群の特徴的な症状です。パーキンソン症候群は、手足の震え、筋肉のこわばり、動作の遅さ、バランスや歩行の問題などを特徴とします。

[幻視やREM睡眠行動異常が認められる。]
正解です。患者さんは「子供たちが遊んでいる」と言っており、これは幻視の可能性を示唆しています。また、睡眠中に手足をばたつかせる行動はREM睡眠行動異常の兆候であり、これは夢の内容を体現するような行動を取る状態です。

間違っている選択肢についての解説は以下の通りです:
[前頭葉に著明な萎縮が生じている。]
この記述は患者さんの症状や検査結果からは直接的には導き出せません。脳血流SPECTで後頭葉の血流低下が認められたとのことですが、前頭葉の萎縮については言及されていません。

[脳梗塞によって二次的に発症した可能性が高い。]
脳梗塞は通常、急激な症状の発現を引き起こしますが、この患者さんの症状は徐々に進行しているようです。また、脳梗塞に特有の症状や検査結果が記述されていません。

[症状は階段状に悪化する。]
この患者さんの症状は徐々に進行しているようですが、階段状に悪化するという記述はありません。階段状の悪化は、一時的な改善や安定期を挟みながら悪化することを意味しますが、このケースではそのような経過は示されていません。

覚えておくべき用語:
パーキンソン症候群:中枢神経系の進行性の障害で、運動機能に影響を及ぼします。
幻視:実際には存在しないものを見る感覚の錯覚。
REM睡眠行動異常:REM睡眠中に筋肉が弛緩するのを防ぐ障害で、夢を行動に移すことがあります。
脳血流SPECT:脳の血流を画像化する検査方法で、脳の機能的な変化を評価するのに用いられます。

◆ 問155

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、5


正解は[ブロモクリプチンは、線条体においてドパミンD2受容体を刺激することで、間接路のGABA作動性神経を抑制する。]と[クロナゼパムは、γ-アミノ酪酸GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合することで、GABAによるCI-チャネルの開口を促進する。]です。

[ブロモクリプチンは、線条体においてドパミンD2受容体を刺激することで、間接路のGABA作動性神経を抑制する。]
ブロモクリプチンはドパミンアゴニストであり、ドパミンD2受容体を刺激して、パーキンソン病の治療に使用されます。この作用により、間接路のGABA作動性神経の活動が抑制され、運動機能が改善されることが知られています。

[クロナゼパムは、γ-アミノ酪酸GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合することで、GABAによるCI-チャネルの開口を促進する。]
クロナゼパムはベンゾジアゼピン系の薬剤で、GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用します。これにより、GABAによるCl-チャネルの開口が促進され、神経の興奮が抑制されます。これは、特にレム睡眠行動障害などの睡眠中の異常行動に対して有効です。


間違いの選択肢について解説します。
[ゾニサミドは、グルタミン酸AMPA受容体を刺激することで、ドパミン作動性神経を亢進させる。]
ゾニサミドは抗てんかん薬であり、ドパミン作動性神経を亢進させる作用はありません。ゾニサミドは、ナトリウムチャネルとカルシウムチャネルのブロッカーとして作用し、神経細胞の過剰な興奮を抑制します。

[カルビドパは、ドパミンβ-ヒドロキシラーゼを阻害することで、レボドパの脳内移行を高める。]
カルビドパはレボドパの脳内移行を高めるために使用されますが、ドパミンβ-ヒドロキシラーゼを阻害するのではなく、末梢でのレボドパの代謝を阻害し、より多くのレボドパが脳に到達するようにする作用があります。

[ドネペジルは、アセチルコリンエステラーゼを阻害することで、アミロイドβタンパク質の分解を促進する。]
ドネペジルはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であり、アセチルコリンの分解を抑制することで、アルツハイマー型認知症の症状改善に寄与します。アミロイドβタンパク質の分解を促進する作用はありません。

覚えておくべき用語:
ドパミンアゴニスト:ドパミン受容体を刺激する薬剤。
GABA作動性:GABA受容体を介して作用すること。
ベンゾジアゼピン系:GABAA受容体に作用し、抗不安や催眠作用を持つ薬剤群。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬:アセチルコリンの分解を抑制し、神経伝達を促進する薬剤。