第109回薬剤師国家試験

◆ 問195

55歳男性。会社員。26歳時に結婚し、子供が二人いる。元来まじめな性格で、会社では昼夜を問わず仕事をしていた。2年前に昇進し、一層仕事に励んでいた。今年に入り、朝早く目が覚めてその後眠れないようになった。また、便秘がちになり食欲が低下したため、近医の消化器内科を受診したが軽快しなかった。その後も体調不良が続き、これらの症状に加え、立ちくらみや耳鳴りが出現したため、内科を転々とし精査を受けたが、器質的異常は認められなかった。やがて、一日中身体の不調を自覚するようになり、業務中にミスが増えた。「こんなダメな自分と一緒にいても未来がないので離婚しよう。」と、妻に頻回に言うようになった。趣味のゴルフへの興味もなくなり、休日は家でぼんやり過ごすようになったため、心配した妻と一緒に精神科を受診し、うつ病と診断された。
 この患者の病態と治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • 微小妄想が認められる。
  • 昏迷が生じている。
  • 記憶障害を伴う可能性が高い。
  • 治療では、十分な休養が推奨される。
  • 薬物療法では、初回から2剤以上の抗うつ薬を併用する。

◆ 問195

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


正解の選択肢について解説します。
[微小妄想が認められる。]
患者は「こんなダメな自分と一緒にいても未来がないので離婚しよう」と頻回に言っており、これは自己評価が極端に低下していることを示しています。うつ病の患者さんでは、自己否定的な考えや過小評価が見られることがあり、これを微小妄想と呼びます。

[治療では、十分な休養が推奨される。]
うつ病の治療においては、心身の回復を促すために十分な休養を取ることが重要です。ストレスの軽減や生活リズムの整備も治療の一環として推奨されます。


誤り選択肢について解説します。
[昏迷が生じている。]
昏迷は意識がない状態を指し、患者さんにはそのような症状の記述はありません。

[記憶障害を伴う可能性が高い。]
うつ病では注意力や集中力の低下は見られますが、記憶障害は主要な症状ではありません。

[薬物療法では、初回から2剤以上の抗うつ薬を併用する。]
通常、抗うつ薬の治療を開始する際には、1剤から始めます。効果が不十分な場合には、他の薬剤を追加することがありますが、初回から2剤以上を併用することは一般的ではありません。