第109回薬剤師国家試験

◆問258-259

 25歳女性。身長153cm、体重40kg。19歳のときにクローン病と診断され、メサラジンとアザチオプリンによる併用療法を実施していたが、効果不十分のため1年前よりアダリムマブ(遺伝子組換え)皮下注が追加となった。
 2週間前より、発熱、腹痛及び下痢があり検査目的で入院となった。内視鏡検査の結果、症状が悪化していることが分かり、アダリムマブが以下の処方に変更されるとともに、処方2が追加された。
109回問258-259画像1

◆ 問258


◆ 問259

クローン病の症状寛解を目的とした薬物の作用機序のうち、今回までに処方されてきたのとは異なるのはどれか。2つ選べ。
  • リンパ球表面に発現するα4β7インテグリンに結合することで、リンパ球の腸管粘膜への浸潤を阻害する。
  • 可溶性及び膜結合型TNF-αに特異的に結合することで、TNF-αの受容体への結合を阻害する。
  • IL-12及びIL-23のp40サブユニットに結合することで、ヘルパーT細胞の活性化を抑制する。
  • 生体内でチオイノシン酸となり、イノシン酸と拮抗してプリンヌクレオチドの生合成を阻害する。
  • 細胞内でグルココルチコイド受容体に結合し、核内移行して遺伝子転写を調節することで、抗炎症作用を示す。

◆ 問258

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


この患者さんに対する服薬指導の内容について、正解と誤りの理由を以下に示します。
[正解:メサラジンと処方1の薬剤との相互作用による重篤な副作用がないこと。]
メサラジンとウステキヌマブの相互作用については、特に重大な懸念は報告されていません。したがって、この指導は適切です。

[誤り:処方1の薬剤への変更後は、妊娠を気にしなくてよいこと]
アダリムマブは妊娠中の使用について注意が必要です。患者さんが妊娠している場合、医師と相談して適切な対応を行う必要があります。

[誤り:処方1の薬剤はアダリムマブとは異なり、感染症のリスクがないこと、]
ウステキヌマブは免疫抑制剤であり、感染症のリスクがある可能性があります。患者さんには感染予防対策を遵守するよう指導する必要があります。

[正解:処方2の薬剤は腸への負担が少ないこと。]
エレンタールは成分栄養剤であり、腸への負担が少ないため、この指導は適切です。

[誤り:処方2の薬剤を水や微温湯に溶解後、時間をかけずにすばやく飲み干すこと。]
エレンタールは内用剤であり、溶解後に摂取する必要がありますが、時間をかけずにすばやく飲み干す必要はありません。患者さんに適切な摂取方法を指導する必要があります。

◆ 問259

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、5


この患者さんのクローン病治療において、処方1とは異なる作用機序を持つ薬物は以下の通りです。
[正解:リンパ球表面に発現するα4β7インテグリンに結合することで、リンパ球の腸管粘膜への浸潤を阻害する。]
ウステキヌマブはα4β7インテグリンに結合し、腸管粘膜へのリンパ球の浸潤を抑制します。これにより、炎症を抑え、クローン病の症状寛解を目指します。

[誤り:可溶性及び膜結合型TNF-αに特異的に結合することで、TNF-αの受容体への結合を阻害する。]
アダリムマブはTNF-αに特異的に結合し、その活性を抑制します。これにより、炎症を抑える効果があります。

[誤り:IL-12及びIL-23のp40サブユニットに結合することで、ヘルパーT細胞の活性化を抑制する。]
ウステキヌマブはIL-12およびIL-23のp40サブユニットに結合することで、ヘルパーT細胞の活性化を抑制します。

[誤り:生体内でチオイノシン酸となり、イノシン酸と拮抗してプリンヌクレオチドの生合成を阻害する。]
この作用機序はアザチオプリンに関連しており、クローン病治療には直接関係ありません。

[正解:細胞内でグルココルチコイド受容体に結合し、核内移行して遺伝子転写を調節することで、抗炎症作用を示す。]
メサラジンは細胞内でグルココルチコイド受容体に結合し、抗炎症作用を発揮します。