✔ 正解です！
✖ 不正解です。

第109回薬剤師国家試験

◆問268-269

43歳男性。既婚で妻と二人暮らし。糖尿病治療のため、インスリンの自己注射を行っている。インスリン療法開始から1年程度経過し、血糖値は正常値に近づいてきた。しかし、食事をとらずに注射したときや入浴中の低血糖症状による意識障害により、救急搬送を何度か経験しており、グルカゴン注射液を家族が投与できるよう3ヶ月前に処方(処方1)された。しかし、その後重症低血糖による意識障害を起こしている本人を前にして、妻が注射液の調製を失敗してしまい、救急車を待つことしかできなかった。そこで、今後の低血糖対策として、グルカゴン点鼻粉末剤(処方2)を使用できるよう、妻同席のもと医師による説明が実施され、薬剤部には薬剤の使用方法等について説明の依頼があった。
109回問268-269画像1

◆ 問268

下図は処方1と処方2の薬剤投与時の、血漿中グルカゴン濃度(A)と血中グルコース濃度(B)の時間推移をそれぞれ示したものである。次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
109回問268-269画像2
  • 処方1で投与した場合のグルカゴンの最高血漿中濃度到達時間は30分である。
  • 処方1で投与した場合の投与後60分までの血中グルコース濃度の上昇推移は、処方2で投与した場合とほぼ等しい。
  • 処方2で投与した場合、グルカゴンは鼻粘膜より直接体循環に移行し、肝臓での初回通過効果を回避することができる。
  • 処方2で投与する場合に処方1の場合と同等の血中グルコース濃度上昇作用を得るためには、同用量のグルカゴンが必要である。
  • 処方2で投与した場合、投与後30分までの血中グルコース濃度は約70mg/dLであり、最大血中グルコース濃度は140mg/dLを超える値まで上昇する。

◆ 問269

◆ 問268

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解：2、3


正解の選択肢について、解説します。
[処方1で投与した場合の投与後60分までの血中グルコース濃度の上昇推移は、処方2で投与した場合とほぼ等しい。]]
正解です。これは、グラフBに示された両処方の血中グルコース濃度が時間とともに類似したパターンで上昇していることから判断できます。

[処方2で投与した場合、グルカゴンは鼻粘膜より直接体循環に移行し、肝臓での初回通過効果を回避することができる。]]
正解です。これは、グラフAにおいて処方2のグルカゴン濃度が急速に上昇していることから示されています。


誤りの選択肢について、解説します。
[処方1で投与した場合のグルカゴンの最高血漿中濃度到達時間は30分である。]]
誤りです。グラフAによると、処方1のグルカゴン濃度は約半時間（30分）でピークに達していますが、これは選択肢の記述と矛盾しています。

[処方2で投与する場合に処方1の場合と同等の血中グルコース濃度上昇作用を得るためには、同用量のグルカゴンが必要である。]]
誤りです。グラフBに示されたように、異なるグルカゴン濃度でも血中グルコース濃度の上昇は類似しています。

[処方2で投与した場合、投与後30分までの血中グルコース濃度は約70mg/dLであり、最大血中グルコース濃度は140mg/dLを超える値まで上昇する。]
誤りです。これはグラフBに反しています。グラフBでは、処方2で投与後30分までの血中グルコース濃度は140mg/dLを超えていません。

◆ 問269

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解：1、2


正解の選択肢についての解説は以下の通りです。
[この点鼻剤を使用すると10～15分程度で低血糖状態からの回復が期待できます。]
正解です。この点鼻剤は、低血糖症状が発生した際に迅速にグルカゴンを血中に取り込むことができるため、10～15分程度で低血糖状態からの回復が期待できるというのは正しいです。点鼻剤は注射液と比べて調製が容易で、意識がない状態でも家族が使用できる利点があります。

[低血糖状態となっても、本人の自覚がないことがありますので、疑わしい症状があれば、意識があるうちに補食や糖分を含む飲料を摂取させてください。]
正解です。低血糖症状は自覚しにくいことがあり、特に睡眠中や意識がもうろうとしているときなどは本人が気づかないことが多いです。そのため、低血糖を疑う症状が見られた場合には、意識があるうちに速やかに糖分を摂取させることが重要です。


誤りの選択肢についての解説は以下の通りです。
[意識がない状況では、この点鼻剤を使用しないでください。]
誤りです。意識がない状態でも、点鼻剤は使用できます。実際には、意識がない状態であってもグルカゴン点鼻粉末剤を使用することで、低血糖からの回復を助けることができます。

[低血糖の際にすぐに使用できるよう、自宅では薬剤の防湿外装フィルムをあらかじめ剥がしておいてください。]
誤りです。薬剤の防湿外装フィルムをあらかじめ剥がしておくと、薬剤が湿気を帯びて効果が低下する可能性があります。そのため、使用する直前までフィルムは剥がさない方が良いです。

[意識が回復した場合は、仰臥位でブドウ糖などの糖分を摂取させてください。]
誤りです。意識が回復した場合には、仰臥位での糖分摂取は窒息のリスクを高める可能性があるため、安全な姿勢をとってから糖分を摂取させるべきです。仰臥位ではなく、座位や半座位が望ましいです。

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