第109回薬剤師国家試験

◆問302-303

64歳女性。身長155cm、体重51kg。うつ病の既往歴あり。胃がん腹膜播種転移(StageⅣ、HER2陰性)に対しテガフール・ギメラシル・オテラシル(80mg/m2)+シスプラチン(60mg/m2)併用療法を開始したが、3ヶ月後に腫瘍の増悪を認めた。二次治療としてパクリタキセル(80mg/m2)+ラムシルマブ(8mg/kg)併用療法を施行した。徐々に末梢神経障害が認められ、処方1及び2の処方薬を服用していた。末梢神経障害は落ち着いたが、がん疼痛NRS(注)8を認めたため、トラマドール口腔内崩壊錠は処方3に変更され、服用開始3日目に患者面談を行った。
(注)NRS:Numerical Rating Scale
109回問302-303画像1
面談内容は以下のとおり。
患者:麻薬と聞いて不安だったけど、痛み止めが効いたよ。
薬剤師:痛みが落ち着いてよかったですね。食事とお通じはいかがですか。
患者:ご飯は食べてます。お通じは、トイレの時にいきみますが、スッキリしなくて残った感じがあります。

◆ 問302

面談等の結果、薬剤師の医師への提案内容として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
  • グラニセトロンの追加
  • アミトリプチリン錠を75mg/日へ増量
  • 酸化マグネシウム細粒を3,000mg/日へ増量
  • ナルデメジンの追加
  • オキシコドン徐放錠の中止

◆ 問303


◆ 問302

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:4


[ナルデメジンの追加]
正解です。患者さんがオピオイド系鎮痛薬であるオキシコドンを服用しているにも関わらず、便秘の症状を訴えているためです。ナルデメジンはオピオイド誘発性便秘(OIC)に対する選択肢として承認されており、この症状の改善に役立ちます。


他の選択肢の解説は以下の通りです。
[グラニセトロンの追加]
不適切です。グラニセトロンの追加は、患者さんが化学療法による吐き気や嘔吐を経験していないため不適切です。

[アミトリプチリン錠を75mg/日へ増量]
不適切です。アミトリプチリン錠を75mg/日へ増量する提案は、患者さんがうつ病の既往歴があるとはいえ、現在の症状には関連していないため不適切です。

[酸化マグネシウム細粒を3,000mg/日へ増量]
不適切です。酸化マグネシウム細粒を3,000mg/日へ増量する提案は、便秘の改善には有効かもしれませんが、オピオイド誘発性便秘には特化した治療ではないため、この場合は不適切です。

[オキシコドン徐放錠の中止]
不適切です。オキシコドン徐放錠の中止は、患者さんががん疼痛NRS8の強い痛みを経験しているため、痛みの管理が困難になる可能性があるため不適切です。また、オキシコドンの中止は便秘の根本的な解決にはならず、痛みのコントロールを損なう可能性があります。

◆ 問303

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


正解の選択肢についての解説は以下の通りです。
[腫瘍マーカーのCEAやCA19-9の上昇が見られる。]
正解です。胃がんでは、腫瘍マーカーとしてCEA(癌胚性抗原)やCA19-9(炭水化物抗原19-9)の値が上昇することが一般的です。これらのマーカーは、がんの進行を示す指標として利用されることがあります。

[重度の動脈血栓塞栓症が出現した場合、ラムシルマブを中止する。]
ラムシルマブは血管新生を阻害する薬剤であり、重度の動脈血栓塞栓症のリスクがあるため、そのような副作用が出現した場合には使用を中止することが推奨されます。


誤りである選択肢についての解説は以下の通りです。
[予後は、グリーソン(Gleason)スコアによって評価される。]
グリーソンスコアは前立腺がんの組織学的な評価に用いられるものであり、胃がんの予後評価には適用されません。

[二次治療による横紋筋融解症に注意する。]
横紋筋融解症は、筋肉が急速に破壊される状態を指し、通常は外傷や過度の運動、薬剤の副作用などによって引き起こされます。このケースでは、二次治療による横紋筋融解症に特に注意する必要は示されていません。

[二次治療が治療抵抗性となった場合には、トラスツズマブの追加を考慮する。]
トラスツズマブはHER2陽性のがんに対して使用される薬剤です。この患者さんはHER2陰性であるため、トラスツズマブの追加は適切ではありません。また、治療抵抗性となった場合の治療選択肢としては他の薬剤や治療法が考慮されるべきです。