第109回薬剤師国家試験

◆ 問328

65歳男性。30年前の検査でB型肝炎ウイルス(HBV)陽性であったが、症状もなく長年未治療のまま放置していた。最近になり、倦怠感、腹部膨満感及びめまい、ふらつきが強くなり、家族に連れられて受診したところ、非代償性肝硬変と診断を受け緊急入院となった。検査の結果、腹水が観察され血圧も高値であり、内服薬が開始されることになった。患者は日頃より便秘を訴えており、現在、食事は可能であるが摂取量が減ってきている。また、血中アンモニアが198μg/dLと高値を示している。以下が入院後の処方である。
109回問328画像1
処方に対する薬剤師のアセスメント等として、適切なのはどれか。2つ選べ。
  • 高血圧に対してアムロジピンでコントロールが不十分な場合には、テルミサルタンの追加を提案する。
  • 利尿剤による過度の脱水は、肝性昏睡(肝性脳症)を誘発する可能性があるため、利尿薬の投与量に注意が必要である。
  • 今後肝機能の改善が見られない場合には、ウルソデオキシコール酸を中止し、アセチルシステインを提案する。
  • テノホビルは、投与中止により肝炎の重症化を起こすことがあるため、患者に自己判断で中止しないように指導する。
  • 分岐鎖アミノ酸製剤は非代償性肝硬変の治療に必須のため、今後食事が摂取できなくなっても継続する必要がある。

◆ 問328

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


正解の選択肢についての解説は以下の通りです。
[利尿剤による過度の脱水は、肝性昏睡(肝性脳症)を誘発する可能性があるため、利尿薬の投与量に注意が必要である。]
利尿剤による過度の脱水は、血中アンモニア濃度の上昇を招き、肝性脳症のリスクを高めます。この患者はすでに血中アンモニアが高値を示しており、非代償性肝硬変も診断されています。したがって、利尿薬の投与量には特に注意が必要です。

[テノホビルは、投与中止により肝炎の重症化を起こすことがあるため、患者に自己判断で中止しないように指導する。]
テノホビルはB型肝炎ウイルス(HBV)の治療に使用される薬剤で、投与を中止するとウイルス活動が再燃し、肝炎が悪化する可能性があります。患者が自己判断で薬を中止しないよう、適切な指導が必要です。


誤りの選択肢についての解説は以下の通りです。
[高血圧に対してアムロジピンでコントロールが不十分な場合には、テルミサルタンの追加を提案する。]
アムロジピンはカルシウム拮抗薬であり、高血圧の治療に用いられます。しかし、この患者は非代償性肝硬変を有しており、テルミサルタンのようなARB薬剤を追加することは、血圧を過度に下げるリスクがあり、肝性脳症のリスクを高める可能性があるため、提案するのは適切ではありません。

[今後肝機能の改善が見られない場合には、ウルソデオキシコール酸を中止し、アセチルシステインを提案する。]
ウルソデオキシコール酸は肝臓の保護と肝機能の改善に役立つ薬剤です。肝機能が改善されない場合でも、ウルソデオキシコール酸を中止するのは適切ではなく、アセチルシステインの提案も根拠に基づいていません。

[分岐鎖アミノ酸製剤は非代償性肝硬変の治療に必須のため、今後食事が摂取できなくなっても継続する必要がある。]
分岐鎖アミノ酸製剤は肝性脳症の治療に有用ですが、「必須」とは限りません。食事が摂取できなくなった場合には、他の栄養補給方法を検討する必要があります。また、患者の全体的な状態や栄養状態に応じて、治療計画を調整する必要があります。