第109回薬剤師国家試験

◆ 問337

 院内の安全対策研修会で、下記の事例をもとに医療事故の対応を多職種で議論した。
事例
 60歳女性。関節リウマチの診断で今回より初めて1日あたりメトトレキサートカプセル2mg3カプセルが4週間分処方された。本来、週1回服用のところ、連日服用で、服用開始5日目に倦怠感、食欲不振、歯肉出血を認めた。翌日には喀血により救急搬送され、当院に緊急入院となった。当日の検査の結果、口腔粘膜障害、胃腸障害、肝機能障害、骨髄抑制が認められた。
 議論の中で、この患者への処置について薬剤師が意見を求められた。この患者に対して効果的な対処はどれか。2つ選べ。
  • ホリナートカルシウムの投与
  • ビタミンK製剤の投与
  • 薬用炭の投与
  • アスピリン製剤の投与
  • 炭酸水素ナトリウム注射液の投与

◆ 問337

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、5


それぞれの選択肢を解説します。
[ホリナートカルシウムの投与]
正解です。ホリナートカルシウムは葉酸補充剤で、メトトレキサートの副作用を軽減するために使用されます。メトトレキサートは葉酸代謝を阻害するため、葉酸補充剤が必要となります。

[ビタミンK製剤の投与]
誤りです。ビタミンKは主に出血傾向のある患者に対する凝固因子の補充に使用されます。この患者の症状はメトトレキサートの過剰摂取によるものであり、ビタミンKは特に効果的ではありません。

[薬用炭の投与]
誤りです。薬用炭は一部の薬物の吸収を防ぐために使用されますが、メトトレキサートの過剰摂取後数日が経過している場合、薬用炭の投与は効果的ではありません。

[アスピリン製剤の投与]
誤りです。アスピリンは解熱鎮痛剤や抗血小板薬として使用されますが、この患者の症状に対しては効果的ではありません。

[炭酸水素ナトリウム注射液の投与]
正解です。炭酸水素ナトリウムは体内の酸性度を調整するために使用されます。メトトレキサートの過剰摂取は酸性度を上昇させる可能性があるため、炭酸水素ナトリウムの投与は有効です。また、炭酸水素ナトリウムは尿のpHを上昇させ、メトトレキサートの排泄を促進します。これにより、体内のメトトレキサート濃度が低下し、副作用が軽減されます。